国鉄8620形蒸気機関車58654号機

8620形蒸気機関車58654について

8620形蒸気機関車58654号は、九州旅客鉄道（JR九州）によって動態保存されている蒸気機関車であり、歴史的な背景を持つ日本の鉄道史の一端を担う存在です。

経歴

この機関車は1922年（大正11年）11月18日に日立製作所笠戸工場で完成し、同年12月26日には長崎本線で運行を始めました。現役時代、58654は長崎本線や唐津線、筑豊地域、さらには湯前線など、九州各地を転々としながら多くの列車を牽引しました。特に1961年にはお召し列車を牽引するなど、その活躍は多岐にわたりました。1975年に運用を終了し、その際の走行距離は300万kmを超えました。

その後、人吉市に貸与され、肥薩線矢岳駅前の人吉市SL展示館に展示されることになりました。静態保存されていた58654ですが、1987年に蒸気機関車復活の道筋が揺らぎ始めます。

保存機からの復元

1987年、北九州市の市長とJR九州社長の合意により、九州でのSL復活が本格的に検討されました。その際に58654はボランティアによって良好な状態で保存されていたため、復元候補に選ばれました。1988年には小倉工場で大規模な修復が行われ、ボイラーや台枠、炭水車などが改修され、新たに運転可能な形に生まれ変わりました。1989年には「SLあそBOY」として運行を開始し、観光資源としての役割を果たすようになります。

運行再開後、58654は多くのイベント列車を牽引し、日本各地でその姿を見せました。1992年にはデザイン変更がなされ、濃緑色に塗装されるとともに、ロゴも大きく描かれるようになりました。運行中には火の粉を防ぐ装置が取り付けられるなど、時代の変化に伴った改良が続けられました。特に1999年に「銀河鉄道999号」として特別運行を行った際には、多くのファンを引きつけました。

運用離脱から再復活まで

しかし、機関車は古く、2005年頃から老朽化が顕著になり始めます。試運転で異常が発生し、その後は補助的な運行を余儀なくされました。最終的に、2008年には運用を終了し、動態保存の可能性を模索することとなります。さらに調査が進むと、製造元の日立製作所が当時の図面を所持しており、その活用が期待されました。

2007年には再び修復作業が開始され、約4億円をかけて台枠やボイラーが新たに作り直され、2019年に「SL人吉」として営業運転が再開されました。2022年には製造から100年を迎えることを記念し、多くのイベントが行われ、58654への関心が再燃しました。

現在の状況

2023年に新造から100年を迎えた58654ですが、運転終了が2024年3月に予定されています。しかしながら、地域の人々はこの機関車の動態保存を望んでおり、2023年の人吉市長選挙ではその声が訴えられる場面もありました。この機関車は今後、人吉市に無償譲渡され、保存および展示される予定です。数々の歴史を持つ58654号は、ただの鉄道車両ではなく、九州の鉄道文化を語る一台であり続けることでしょう。

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