矢岳駅

矢岳駅

矢岳駅は、熊本県人吉市矢岳町にある、九州旅客鉄道（JR九州）肥薩線の駅です。肥薩線の山線区間に位置し、標高約536.9メートルと、肥薩線の中で最も高い場所にあります。かつては急行「えびの」の停車駅でしたが、2000年3月のダイヤ改正で廃止されました。

歴史

駅の建設当初は藍田村大字大畑という地名でしたが、近くに矢岳第一トンネルがあることから、矢岳駅と名付けられました。その後、町名も矢岳町となりました。駅開設当初は利用が少なかったものの、運送業者や木材業者が集まり、木炭や木材の積み出しで賑わいました。第二次世界大戦後には開拓者が入植し、昭和30年代には約780人が住んでいたとされています。

年表

1909年（明治42年）11月21日：鹿児島本線の一部として鉄道院が開設。
1927年（昭和2年）10月17日：川内本線全通に伴い肥薩線所属駅となる。
1972年（昭和47年）：構内にSL展示館開設。
1974年（昭和49年）10月1日：貨物取扱廃止。
1984年（昭和59年）2月1日：荷物扱い廃止。
1986年（昭和61年）11月1日：駅員無配置駅となる。
1987年（昭和62年）4月1日：国鉄分割民営化によりJR九州が継承。
2007年（平成19年）11月30日：矢岳駅とSL展示館の保存車が南九州近代化産業遺産群に選定。
2020年（令和2年）7月4日：令和二年7月豪雨により営業休止。

駅構造

単式ホーム1面1線の地上駅です。最盛期には島式ホームや貨物用の線路もありましたが、現在は撤去されています。木造駅舎が残っており、無人駅ですが、待合室には駅ノートが設置されています。また、汲み取り式便所があります。駅構内にはSL展示館があり、蒸気機関車D51 170が展示されています。

駅周辺

駅の正面には小さな集落と田畑が広がっています。鉄道開通前は陸の孤島でしたが、開通と同時に集落が形成されました。かつては駅弁の販売も行われていましたが、川内廻りの海線が開通すると利用者は激減しました。現在は過疎化が進んでおり、付近の小学校は休校となっています。

駅の近くには、明治時代に建てられた駅長官舎が残っています。この官舎は、2003年に国の登録有形文化財に登録され、2019年からはホテル「星岳」として再利用されています。宿泊者は、人吉駅でチェックインした後、列車で矢岳駅まで移動し、夕食は列車で大畑駅のレストランを利用するというユニークな形態です。

矢岳駅の少し南側には熊本県と宮崎県の県境があり、そのすぐ南には矢岳第一トンネルがあります。このトンネルは、建設時に難工事を極め、多くの犠牲者を出しました。トンネルの入り口には、「天険若夷」と「引重致遠」と書かれた扁額が掲げられています。これは、トンネルの難工事を労い、その完成を祝うものです。

また、矢岳第一トンネルと矢岳第二トンネルの間からは、日本三大車窓の一つである矢岳越えの絶景を望むことができます。天候が良い日には、霧島連山やえびの高原、さらに桜島や開聞岳まで見渡せることもあります。観光列車「いさぶろう・しんぺい」はこの絶景をゆっくりと楽しめるよう、一時停止するサービスを行っています。

隣の駅

九州旅客鉄道（JR九州）

■肥薩線

大畑駅 - 矢岳駅 - 真幸駅

脚注

参考文献

熊本産業遺産研究会『肥薩線の近代化遺産』弦書房、2009年4月25日。ISBN 978-4-86329-019-8。
曽根悟（監修）、朝日新聞出版分冊百科編集部（編集）「肥薩線・吉都線・三角線」『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 国鉄・JR』第2号、朝日新聞出版、2009年7月19日。

関連項目

日本の[[鉄道駅一覧]]
日本の都道府県の東西南北端の駅の一覧

外部リンク

矢岳駅（駅情報） - 九州旅客鉄道

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