国鉄EF12形電気機関車

EF12形 電気機関車の概要

EF12形は、1941年から1944年にかけて日本の鉄道省によって製造された貨物用直流電気機関車です。この機関車は、貨物用電気機関車であるEF10形の改良版として開発され、主電動機を従来のMT28から新たに設計されたMT39に変更することで出力を向上させました。EF12形は、設計時期が近いEF56形の貨物機版とも位置付けられます。

製造背景

当初、関門トンネルの工事に伴いEF10形の17両が投入される予定でしたが、資材の不足や戦争の影響により、EF12形の製造は遅れました。結局、17両が1944年9月に全て完成し、その多くは日立製作所や日本車輌製造、汽車製造、三菱重工業で製造されました。

最初の8両は性能が非常に優れ、設計された機関車の中でも特に評価が高いものでした。一方で、9号機以降は準戦時設計となり、機器の簡略化や代用材の使用が進みました。これにより後期製造機の信頼性は低下しましたが、戦後の初期には高い稼働率を維持していました。

車体と主要機器

EF12形の車体は、同時期に製造されたEF10 34以降のモデルとほぼ同じ全溶接構造を持ち、外観上の違いは確認できません。主台車はHT56Aが採用され、従台車もLT113となっており、設計が共通しています。

主電動機はMT39と呼ばれ、出力が従来の約20%増加しました。この改良は、鉄道省の他の電車でも同様になされ、温度上昇に対する絶縁材の耐熱性能が向上した結果です。この変更により、EF12形は牽引力を1,000トンから1,200トンに引き上げることが可能になりました。

運用の歴史

EF12形は、主に東海道本線で軍事輸送のために使用されましたが、戦時中の貨物輸送のシフトやEF10形の故障の影響で、上越線での運用に転じました。1942年からは1,150トン、1943年からは1,200トンの列車を牽引しました。1947年までに全機が高崎第二機関区に集結しました。

その後、1952年からは客貨分離が進められ、EF12形は上越線での運用を続けました。1958年には宇都宮機関区や新鶴見機関区に転属し、最終的には吾妻線で使用されるようになりました。1982年のダイヤ改正で同線の貨物輸送が廃止され、老朽化が進んだEF12形は形式消滅に至り、全機が解体される結果となりました。現存する機関車は存在しません。

主要諸元

• - 全長: 17,500 mm
• - 全幅: 2,810 mm
• - 全高: 3,940 mm
• - 重量: 99.50 t
• - 電気方式: 直流1,500 V
• - 軸配置: 1C+C1
• - 1時間定格出力: 1,600 kW
• - 主電動機形式: MT39
• - 最高運転速度: 75 km/h

このように、EF12形は日本の鉄道史において重要な役割を果たした電気機関車の一つであり、その設計や技術的進歩は、後の車両に影響を与えました。

もう一度検索