国鉄EF56形電気機関車

EF56形電気機関車

EF56形は、日本国有鉄道の前身である鉄道省が1937年（昭和12年）から製造した直流用電気機関車です。旅客列車牽引を目的とし、EF53形をベースに開発されました。特筆すべきは、暖房用の蒸気発生装置（SG）を搭載したことで、これにより冬季の暖房車の連結が不要となり、効率的な運用が可能となりました。

製造と構造

本形式は、川崎造船所（現在の川崎重工業）、三菱電機、日立製作所によって計12両が製造されました。製造時期によって車体の形状に違いがあり、初期の1号機から7号機は丸みを帯びた車体でしたが、1940年（昭和15年）に製造された8号機から12号機は角張った車体と三面折妻の前面形状に変更されました。また、先台車も外側軸受方式に変更されています。パンタグラフは機器配置の都合上、中央に寄せて取り付けられており、これが外観上の大きな特徴となっています。なお、当初13号機として製造される予定だった車両は、出力増強型の電動機を搭載したため、EF57形1号機として落成しました。

尾灯は外付け式が基本でしたが、11号機のみ車体組み込み式に改造されています。

運用

EF56形は、製造当初は東海道本線で優等列車の牽引に活躍しました。特に6号機はお召し列車牽引機に指定され、車体裾部に金色の装飾帯が施され、側面の通風器が2個増設されるなど特別な仕様となりました。この改造は7号機にも行われ、EF58形60号機と61号機が登場するまで、EF53形とともに重要な役割を果たしました。

戦後も、東海道本線の普通列車を中心に運用されましたが、1958年（昭和33年）には東北本線の直流電化区間延伸に伴い、宇都宮区に転属しました。ここでは主に客車列車牽引に使用されました。1961年（昭和36年）にEF57形が宇都宮区に転入すると、両形式は共通運用となりましたが、蒸気暖房装置の自動制御化改造は行われたものの、電気暖房装置への取り替え対象から外されたため、EF57形の改造終了後に再び運用が分離され、EF56形は主に荷物列車を牽引するようになりました。

1969年（昭和44年）からは、5両が山陽本線の急勾配区間「瀬野八」の補機として使用されるため、EF59形に改造されました。残りの車両は、荷物列車や夏季の臨時急行列車の牽引に使用されましたが、EF58形の転入に伴い、1975年（昭和50年）に全車が廃車となりました。また、EF59形に改造された車両も1987年（昭和62年）までに全車廃車となっています。

EF59形への改造

EF56形のうち、以下の5両がEF59形に改造されました。

* EF56 1, 2, 3, 5, 12 → EF59 20, 21, 22, 23, 24

保存状況

EF56形として現存する車両は、残念ながら全て解体されており存在しません。ただし、EF56 2から改造されたEF59 21が、JR貨物の広島車両所に静態保存されています。この車両は、EF56形の面影を今に伝える貴重な存在です。

関連事項

EF56形は、その後の電気機関車の発展に大きな影響を与えた形式であり、鉄道技術史における重要な位置を占めています。また、お召し列車牽引機としての役割や、戦後の客車列車、荷物列車牽引など、様々な場面で活躍したことも特筆すべき点です。

もう一度検索