国鉄EF59形電気機関車

EF59形電気機関車：瀬野八の守り神

EF59形は、1963年に国鉄が導入した直流電気機関車です。山陽本線の瀬野～八本松間、通称「瀬野八」と呼ばれる急勾配区間での貨物列車や旅客列車の補助機関車（補機）として活躍しました。

誕生の背景

1962年、山陽本線の電化が完了しましたが、瀬野八区間では貨物列車の補機として依然として蒸気機関車D52形が使用されていました。しかし、1963年度中に岡山～広島間の貨物列車を電気機関車に置き換える計画が決定し、瀬野八の補機も電気機関車にすることが求められました。

新形式機関車の製造や既存機関車の改造など、様々な案が検討されましたが、コストを考慮し、余剰となっていたEF53形を改造する案が採用されました。1963年3月から4月にかけて、まず2両の改造工事が行われました。

当初、最高運転速度は85km/h以下とされ、形式もEF20形となる予定でしたが、特急列車が広島駅で補機を連結して瀬野～広島間を90km/hで運転するため、85km/h以上の性能が必要となり、EF59形という形式が与えられました。

改造内容

EF59形への主な改造点は以下の通りです。

歯車比の変更: 2.63から3.67に変更され、勾配区間での牽引力を強化
重連総括制御装置の取り付け: 複数両での協調運転を可能に
総括制御用ジャンパ栓などの取り付け: 車両間での制御信号の伝達を可能に
自動解錠装置の取り付け: 連結器の自動解放を可能に

車体色は当初、ぶどう色（茶色）一色でしたが、保線作業員からの視認性向上のため、1966年に警戒色として前面窓下と端梁に黄色と黒のトラ模様が採用されました（EF59 24のみ逆V字）。

また、1968年以降には、高速貨物列車に対応するため、連結器に電気連結器とブレーキ管を接続、走行解放時には補機のブレーキも自動で作動させる電空式密着自動連結器が取り付けられました。

EF53形は1968年までに19両全てがEF59形に改造され、その後、EF56形から5両が追加改造され、計24両が在籍しました。

グループ別解説

EF59 1 - 19: 1963年から1968年にかけてEF53形から改造されたグループです。
EF59 20 - 24: 1969年と1972年にEF56形から改造されたグループです。前期型から改造された20-23号機は丸みを帯びた車体が特徴ですが、後期型から改造された24号機のみ角張った車体となっています。また、暖房用ボイラー（SG）が撤去されました。

後補機運用

EF59形は、1963年から瀬野機関区に配置され、瀬野八区間の後補機として活躍しました。運用区間や連結両数は列車によって異なり、貨物列車は重連、一部の貨物列車と旅客列車は単機で運用されました。

基本的には瀬野駅で補機を連結していましたが、高速貨物列車や寝台特急などの一部列車は広島操車場や広島駅から補機を連結しました。瀬野八での後押しを終えたEF59形は、八本松駅手前で走行解放を行っていましたが、貨物列車は1965年以降、高速貨物列車を除いて西条駅まで連結したまま走行するようになりました。

EF59形は、単機で回送されることはなく、重連や六重連を組んで回送されていました。

廃車

老朽化が進んだため、1977年に後継機としてEF61形200番台が開発されましたが、重連使用時に不具合が見つかり、導入は中断されました。そのため、EF59形は老朽化を抱えながらも引き続き運用されました。

1979年には貨物列車の本数削減や寝台特急牽引機の統一により、補機運用が縮小され、11両が廃車となりました。その後、1982年からEF67形の開発・増備が進められ、1986年10月12日をもって全てのEF59形が運用を終了しました。

EF59 10は保存のためJR西日本に引き継がれましたが、2006年に解体されました。

保存機

EF59形は、補機という地味な存在ながらも、長期間使用されたことから多くの車両が保存されています。

EF59 1 - 碓氷峠鉄道文化むら
EF59 11 - 碓氷峠鉄道文化むら (復元作業が行われ、警戒色が消され、ナンバープレートは元の「EF53 2」に変更)
* EF59 21 - JR貨物広島車両所

かつて保存されていたEF59 10は解体され、EF59 16のカットボディも2022年に解体されました。

その他の情報

EF59形は、西村京太郎の推理小説「特急さくら殺人事件」に登場し、そのトリックに用いられたことでも知られています。

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