国鉄KE50形蒸気機関車

国鉄KE50形蒸気機関車：幻に終わった戦時型テンダー機関車

国鉄KE50形蒸気機関車は、第二次世界大戦中に日本国有鉄道の前身である鉄道省によって設計された過熱式テンダー機関車です。深刻化する輸送逼迫に対応するため、D52形蒸気機関車と並行して計画されましたが、資材不足や技術的な課題から、試作されることなく計画のみで終わりました。ここでは、KE50形が計画された背景、その構造、そして最終的に製造が見送られた理由について解説します。

計画の背景

第二次世界大戦中、日本の輸送能力は深刻な危機に瀕していました。特に、物資輸送を担っていた船舶が次々と撃沈され、鉄道への負担が急増しました。こうした状況を受け、鉄道省は輸送力増強のために戦時型蒸気機関車の開発を急務としました。その中で、KE50形は、当時の輸送需要に応えるべく、D52形とともに計画されたのです。

構造

KE50形は、E形テンダー機関車として設計されました。日本におけるE形テンダー機関車は2例目でした。ボイラーはD52形と同一の火室を使用しつつ、缶胴を500mm延長、煙管長は戦後型のC59形と同じ5500mmとする設計でした。これにより、D52形と同等の性能を維持しつつ、更なる輸送力向上が期待されました。動輪径は1250mm、動軸距は1420mm×4。シリンダーはD52形と同一寸法でありながら、シリンダー引張力は21.72トンとD52形より12%向上していました。キャブとテンダーはD52形と同一のものが使用される予定でした。

計画中止の理由

KE50形は、最終的に製造されることなく計画中止となりました。その理由として、以下の点が挙げられます。

動輪径の問題: 動輪径が1250mmと、高速走行には不向きであると判断されました。当時の輸送事情を考慮すると、高速走行よりも牽引力が重視されるべきでしたが、将来的な汎用性を考慮した結果、マイナス要因と見なされた可能性があります。
転車台の制約: 全長が長く、当時最大であった20メートルの転車台にぎりぎり乗るサイズでした。これは、運用上の大きな制約となり、柔軟な運用を妨げる要因となりました。

これらの理由から、KE50形の製造は見送られ、結果としてD52形に更なる負担をかけることになりました。もしKE50形が実際に製造されていたら、戦後の鉄道史にどのような影響を与えていたのか、想像力を掻き立てられます。

参考資料

高木宏之、石井幸孝、岡田誠一、小野田滋、齋藤晃、沢柳健一、杉田肇、寺田貞夫、福原俊一、星晃『幻の国鉄車両』JTBパブリッシング、2007年11月1日、76-77頁。ISBN 978-4-533-06906-2。
高木宏之『国鉄蒸気機関車史』ネコ・パブリッシング　2015　ISBN 978-4-7770-5379-7

もう一度検索