国防義勇軍

イギリス陸軍予備役：歴史と現状

イギリス陸軍予備役、かつては国防義勇軍（Territorial Force, Territorial Army）として知られた組織は、イギリス陸軍の重要な一部を担っています。常備軍とは異なり、非常勤の志願兵から構成され、有事の際には常備軍に編入されて活動します。その歴史は古く、アングロサクソン時代の民兵組織「フュルド」にまで遡ります。

歴史

黎明期：民兵と義勇兵

中世イギリスでは、健康な自由人男子は地域民兵組織に属することが義務付けられていました。時代とともに、この民兵組織は国防と治安維持の両機能を担っていましたが、13世紀頃には軍事機能を担う「民兵（Militia）」と治安維持機能を担う「民警団（Posse comitatus）」に分化していきました。

18世紀には、七年戦争とナポレオン戦争における本土防衛の必要性から、民兵と富農層による義勇騎兵部隊「ヨーマンリー」が組織されました。ヨーマンリーは本土警備に重要な役割を果たし、フランス軍の上陸を撃退した事例もあります。

19世紀：義勇軍の設立

クリミア戦争での兵力不足を背景に、1859年、内務省から陸軍省に移管され、義勇軍（Volunteer Force）が設立されました。この義勇軍は、平時は市民生活を送りながら訓練を受け、有事には常備軍と同様の待遇で活動しました。第二次ボーア戦争にも参加するなど、実戦経験も積みました。

20世紀前半：国防義勇軍の誕生と大戦

1907年、義勇軍、ヨーマンリー、民兵を統合した「国防義勇軍（Territorial Force）」が創設されました。第一次世界大戦では、本土防衛だけでなく、海外派遣にも多数の部隊が参加し、大きな損耗を被りました。

第一次世界大戦後、国防義勇軍は再編され、1921年には正式に「国防義勇軍（Territorial Army）」と改称されました。第二次世界大戦でも、常備軍と共に各地で戦いました。

20世紀後半：変革と縮小

第二次世界大戦後は、国防義勇軍は縮小と再編を繰り返しました。1967年には「国防義勇予備軍（Territorial Army and Volunteer Reserve, TAVR）」に改組され、師団制は廃止されました。その後、1982年に国防義勇軍の名称が復活しましたが、その役割は常備軍への予備役部隊の供給へと変化していきました。フォークランド紛争や湾岸戦争でも活躍しました。

21世紀：陸軍予備役へ

1997年の戦略的防衛の見直し（SDR）以降も国防義勇軍は縮小を続け、2014年には現在の名称である「陸軍予備役（The Army Reserve）」へと改称されました。組織の性格は「最後の頼みの綱」から「最初に動員する予備役」へと変化し、イラク戦争やアフガニスタン紛争などにも多数の兵員が派遣されています。

募集、教育、訓練

陸軍予備役は地域部隊、全国部隊、後援組織の3種類に分類され、募集範囲が異なります。入隊者は基礎訓練と職能訓練を受け、地域部隊では週末や平日夜間の訓練、2週間の合宿、全国部隊では集中訓練が実施されます。士官については、大学士官教育隊が各大学に設置されています。

まとめ

イギリス陸軍予備役は、長い歴史と伝統を持つ組織です。その役割は時代とともに変化してきましたが、現代においてもイギリス国防にとって重要な存在であり続けています。その柔軟性と即応性、そして高い訓練水準は、今後もイギリス陸軍の戦力維持に大きく貢献するでしょう。

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