国際化拠点整備事業

国際化拠点整備事業（グローバル30）とは

国際化拠点整備事業、通称グローバル30は、文部科学省が日本の大学を対象に実施する支援事業です。世界的な人材獲得競争が激化する中、日本の大学の国際競争力を強化し、魅力的な教育を提供することで、世界中から優秀な留学生を集め、日本人学生と留学生が共に学び、刺激し合う環境を作ることを目的としています。この事業は、国際的に活躍できる人材を育成するために、質の高い大学教育と留学生の受け入れ体制を整備する大学を国が支援するものです。

事業の概要

グローバル30は、2020年までに30万人の留学生を受け入れるという「留学生30万人計画」の一環として始まりました。この計画に先立ち、日本を代表する国際的な教育拠点を形成するために、留学生の受け入れ実績などを基に、国際化拠点となりうる大学を公募で選抜し、国が財政的な支援を行います。

この事業では、各大学に英語で学位を取得できるコースが最低一つ以上設置されます。大学は、国際競争力があり、留学生の受け入れ実績が豊富で、英語での指導が可能な教員が十分にいる学部や研究科を選び、これまでの実績や英語学位プログラムを提示します。日本学術振興会の審査を経て選ばれた大学には、英語学位コースが設置されます。

国際化拠点として選定された大学は、海外からの教員招聘や職員の増強、奨学金の提供、海外拠点事務所の開設、学生寮の建設など、多くの費用が必要となります。そのため、国から財政的な支援が提供されます。当初計画では、各大学に年間2～4億円、総額40億円程度の支援が予定されていましたが、事業仕分けにより、年間30億円程度に削減されました。

採択審査

採択審査は、日本学術振興会によって行われ、以下の観点が重視されます。

対象となる学部・研究科が国際競争力を持っているか。
英語での授業のみで学位取得が可能か。
留学生の受け入れ実績や指導経験があるか。
海外からの留学生受け入れ体制が整っているか（例：9月入学制度）。
教育・研究の水準が高いか。
海外拠点の設置状況はどうか。

これらの観点から、書面審査と面接審査が行われ、申請のあった22大学のうち13大学が選ばれました。

国立[[大学]]は15大学の申請に対し7大学が採択され、倍率は2.1倍でしたが、私立大学は1.1倍でした。採択された国立[[大学]]は全て、留学生の受け入れ数が多い大学の上位10校に入っており、実績のある大学が選ばれたことがわかります。

事業仕分けとその後

2009年、この事業は事業仕分けにより予算削減の対象となりました。国際化拠点大学からは懸念の声が上がりましたが、2010年度の予算は3割削減されました。さらに、2010年には一旦廃止という判定がなされましたが、産業界の首脳や有識者から、日本の国際競争力を損なうとの強い懸念の声が上がり、事業への支持表明が拡大しました。その結果、予算は前年と同水準（当初計画より3割減）で確保されました。

特に、経団連は、会員企業へのアンケートを通じて、この事業への高い関心を示し、経営・経済・法律等を専攻する学生を対象に奨学金を設け、会員企業が積極的に採用する方針を打ち出しました。これは、新興国からの優秀な留学生の獲得が、将来のビジネスチャンスの拡大や国際社会における日本の地位向上に繋がると考えられているからです。

事業仕分けの結果、主要大学の間では、このままでは国際化拠点の形成どころか、国際競争力を失い、優秀な人材が海外に流出するとの危機感が広がりました。研究大学連盟（RU11）の全総長が緊急提言をまとめ、当時の菅総理に提出する事態となりました。日本は、これまで大学への公財政支出が主要先進国の中で最低レベルであり、この状況を改善する必要性が指摘されました。

判定理由と事業の役割

事業仕分けでは、慶応義塾大学が1～2名の留学生に対して英語学位コースを設置している例を基に、「受け入れる留学生の数が少ない」「非効率だ」との意見が出ました。しかし、この事業は、精鋭的な知的拠点を構築することが目的であり、留学生の数を増やすことだけが目的ではありません。世界トップクラスの大学では、質の高い留学生の獲得競争が激しく、日本もこの国際的な変化に対応する必要があります。そのため、採択にあたっては、国際競争力や過去の実績などが審査され、受け入れ対象は、1大学あたり1～3学部程度に限定されました。

世界レベルの留学生を獲得するには、大学が世界のランキングで500位以内に入っていることが一つの条件とされています。2010年度にグローバル30に採択された国立[[大学]]は全て、世界ランキングで200位以内にランクインしていました。しかし、優秀な学生を獲得するのは容易ではありません。学長自らによるトップセールスが行われるなど、世界中で熾烈な獲得競争が繰り広げられています。日本の大学も、優秀な留学生を世界から獲得するため、様々な戦略を立てています。

例えば、早稲田大学は、ベトナム政府との交渉を経て、政府認定の最優秀学生を理工系学部で獲得することに成功しました。また、海外の著名大学は、新興国にサテライトオフィスを設置しており、日本の大学も海外拠点事務所の設置を進めています。グローバル30では、これらの海外拠点事務所を、日本留学の総合窓口として活用することが求められています。

海外拠点事務所の例

アジア: インド・バンガロール（東京大学）、インド・ニューデリー（立命館大学）、ベトナム・ハノイ（京都[[大学]]）
北アフリカ・中東: チュニジア・チュニス（筑波大学）、エジプト・カイロ（九州[[大学]]）
ユーラシア: ロシア・モスクワ（東北大学）、ウズベキスタン・タシケント（名古屋[[大学]]）
ヨーロッパ: ドイツ・ボン（早稲田大学）

留学生の質の保証への取り組み

国際化拠点整備事業では、質の高い留学生を受け入れるため、不法滞在や不法就労を防ぐための対策が講じられています。各大学は、入国管理局と連携し、留学生の在籍管理を徹底する義務を負っています。具体的には、留学生担任の設置、出欠管理、長期欠席者への対応、アルバイト状況の把握、入管への定期的な報告などが求められています。

また、受け入れ対象となるのは、国際競争力があり、高度な教育・研究拠点となりうる学部や研究科に限られています。これにより、少数の優秀な留学生に対して、手厚い指導が可能となっています。

まとめ

国際化拠点整備事業（グローバル30）は、日本の大学が国際競争力を高め、世界で活躍できる人材を育成するための重要な取り組みです。この事業を通じて、優秀な留学生が日本に集まり、日本の教育の質が向上することを期待します。今後も、この事業の成果を検証し、より効果的な留学生受け入れ体制を構築していく必要があります。

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