国際社会学

国際社会学：国家を超えた社会の探求

国際社会学は、社会学の一分野として、国家の枠を超えた広範な社会現象を分析する学問です。単に国際関係を研究するだけでなく、グローバル化や脱国家的な関係性、地球規模の社会問題など、多様な視点から現代社会の構造とダイナミクスを解き明かします。

国際社会学の二つの側面

国際社会学の先駆者である馬場伸也氏は、この分野を大きく二つの側面に分類しました。

1. 国際・社会学: 国際関係や民族関係を社会学的な方法論を用いて分析します。「国際」という概念は、国際関係（international relations）にとどまらず、国境を越えた関係（transnational relations）や地球規模の関係（global relations）といった多様な意味を含みます。難民や移民の問題、NGOの活動、開発援助の取り組みなど、幅広いテーマを対象とします。

2. 国際社会・学: 国際社会全体を一つの有機体と捉え、その構造や機能を分析します。世界システム論や地域統合といったマクロな視点からの分析が中心となります。

近代国家の相対化と多様な研究対象

国際社会学の重要な特徴は、近代国民国家を相対化することです。フランス革命以降、国民国家が国際社会の主要な主体となっていますが、国際社会学は、国家を超えて展開する様々な社会現象に注目します。

国際政治学や国際経済学では扱いきれない、国家を超えた移動（移民研究）、エスニシティや民族問題、文化交流、開発問題、ジェンダー問題、環境問題などが主な研究対象です。ただし、これらのテーマは国際社会学に固有のものではなく、政治学、経済学、人類学など、他の社会科学分野でも研究されています。

国際社会学が他の社会科学と異なる点は、権力や富の分配ではなく、国家を超えた人、モノ、カネ、情報の動きや関係性に焦点を当てる点です。様々な集団や組織、個人の間の関係性を分析することで、グローバル化がもたらす社会変化を多角的に理解しようとしています。

グローバリゼーションと国際社会学

近年急速に進展しているグローバリゼーションは、国際社会学にとって重要な関心事です。国際貿易の拡大や経済格差の拡大といった経済的な側面だけでなく、グローバリゼーションが国民国家の機能にどのような影響を与えているのか、多国籍企業やNGOといった非国家行為体がどのように国際的なネットワークを形成しているのかといった点に注目します。

研究方法と展望

国際社会学は、国家を超えたヒト・社会の集団・組織を類型化し、実証的な研究を行います。研究対象は、水平方向では各国・各地域、垂直方向では家族・地方共同体・企業・都市・国家・国際社会といった様々なレベルに及びます。

日本では、一橋大学が国際社会学の研究において代表的な機関です。他の大学でも国際関係論の枠組みの中で国際社会学の研究・教育が行われていますが、独立した講座を持つ大学はまだ少ないのが現状です。

研究対象例

エスニシティ
ナショナリズム
グローバリゼーション
少数民族問題

国際社会学部を設置する大学例

学習院大学
東京外国語大学
東洋英和女学院大学
長崎県立大学
共愛学園前橋国際大学

主要文献

馬場伸也『アイデンティティの国際政治学』（東京大学出版会、1980年）
梶田孝道編『新・国際社会学』（名古屋大学出版会、2005年）

関連事項

世界システム論
* 長崎大学多文化社会学部

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