国際連合カンボジア暫定統治機構

国際連合カンボジア暫定統治機構（UNTAC、英語: United Nations Transitional Authority in Cambodia）は、カンボジアの内戦終結と平和構築を目的として設立された、国際連合（国連）の平和維持活動（PKO）機関です。UNTACは、1991年のパリ和平協定に基づき、カンボジア国との合意の下、1992年2月28日の国連安全保障理事会決議745によって設置されました。この組織は、カンボジアにおける自由で公正な選挙の実施、新政府の樹立、そして民主的な国家再建を支援するために重要な役割を果たしました。

UNTACの活動は、1991年10月に設立された国際連合カンボジア先遣隊（UNAMIC）の活動を拡大する形で開始されました。UNTACは、選挙の組織と管理、停戦の監視、治安維持、武装勢力の武装解除、難民・避難民の帰還促進など、多岐にわたる任務を遂行しました。国連事務総長特別代表には、当時国連事務次長であった明石康氏が就任し、UNTACの活動を指揮しました。

UNTACの主要な任務の一つは、カンボジア内戦で対立していた勢力の武装解除でした。UNTACは、カンボジア国軍の武装解除には成功したものの、クメール・ルージュの武装解除には失敗しました。この失敗は、クメール・ルージュが領土を拡張し、政治的混乱を引き起こす一因となりました。カンボジア軍の指導者たちは、UNTACによるカンボジア国軍の武装解除は厳格であった一方、クメール・ルージュに対しては寛大すぎたと批判しています。

UNTACは、軍事部門、文民行政部門、文民警察部門、選挙部門、人権部門、帰還部門、復興部門という7つの部門で構成されていました。軍事部門には、32か国から約1万6000名が派遣され、オーストラリアのジョン・サンダーソン少将が司令官を務めました。この規模は、当時のPKOとしては最大級でした。

1993年5月には、UNTACの監視下で憲法制定のための国民議会選挙が実施され、フンシンペックが第一党となりました。9月23日には新憲法が公布され、翌9月24日にはノロドム・シハヌークが国王として復位し、カンボジア王国が再建されました。これに伴い、UNTACは同日をもって任務を終了し、年末までに人員・機材が撤収されました。

UNTACへの参加は、日本にとって自衛隊初のPKO派遣となりました。1992年9月から1993年9月にかけて、停戦監視要員や施設大隊など、合計600名以上の自衛隊員が派遣されました。また、文民警察要員や選挙要員としても多くの日本人が派遣されました。このPKO活動中には、中田厚仁国連ボランティアと高田晴行警部補という2名の日本人殉職者が出ました。

中国もこのPKOに積極的に参加し、中国人民解放軍から軍事監視要員と工兵部隊が派遣されました。これは、中国にとって初の本格的なPKO参加となりました。

UNTACの活動は、カンボジアの平和と民主化に大きく貢献しました。しかし、クメール・ルージュの武装解除の失敗や、その後の政治的混乱など、多くの課題も残しました。UNTACの経験は、その後のPKO活動に貴重な教訓をもたらしました。

関連情報として、UNTACに関連する人物や組織として、中田厚仁、高田晴行、カンボジア特別法廷、自衛隊カンボジア派遣などが挙げられます。

UNTAC公式サイト ([英語]])や、[在カンボジア日本大使館のカンボジア和平パリ協定に関するページも参考にすることができます。

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