高田晴行

高田晴行（たかた はるゆき）は、1959年12月27日に岡山県倉敷市で生まれ、1993年5月4日にカンボジアで殉職した日本の警察官です。彼は岡山県警察で勤務した後、国際連合カンボジア暫定統治機構（UNTAC）の文民警察官として、カンボジアの平和維持活動（PKO）に参加しました。しかし、任務中に武装集団に襲撃され、命を落としました。没後、警視に二階級特進しました。

来歴

1982年に専修大学を卒業後、岡山県警察に採用され、警察学校を卒業しました。その後、岡山東警察署、井原警察署、岡山県警察機動隊で勤務しました。機動隊員としての経験を経て、千葉県警察に出向し、新東京国際空港警備隊隊員を務めました。その後、岡山に戻り、警部補として岡山県警察本部警備部機動隊第二小隊長に着任しました。

1992年10月、高田は国際連合カンボジア暫定統治機構（UNTAC）の文民警察官の公募に応募し、総理府（当時）の国際平和協力隊員に選抜され、UNTACの文民警察官として採用されました。同年10月14日、カンボジアに派遣され、北西部のバンテイメンチェイ州アンピル村で、現地カンボジアの警察官養成に従事しました。1993年5月、クメール・ルージュ（ポル・ポト派）とみられる武装集団による銃撃を受け、33歳という若さで殉職しました。

殺害の経緯

湾岸戦争での日本の国際貢献への批判を受けて、1992年、日本政府は初のPKO活動として自衛隊のカンボジア派遣を決定しました。自衛隊は道路補修などを担当し、全国の都道府県警察からは文民警察官75人が派遣されました。文民警察官は、カンボジア警察への助言を主な任務としました。

自衛隊派遣については国会で激しい議論が交わされましたが、文民警察官の派遣については議論が少なく、注目度も低い状況でした。600人規模の自衛隊は、有刺鉄線で囲まれた宿営地を拠点に活動しましたが、文民警察官はカンボジア各地に分散して駐在しました。高田が派遣されたタイ国境に近いアンピル村は、ポル・ポト派が武装解除を拒むレッドエリアと呼ばれる危険な地域であり、選挙が近づくにつれて治安が悪化していました。

ポル・ポト派による停戦違反や選挙妨害が頻発し、隊員の宿舎も襲撃されるなど、治安情勢は急速に悪化していました。文民警察官は武器の携行が認められていなかったため、身を守るために現地で自動小銃を購入する隊員もいました。文民警察隊隊長の山崎裕人は、ポル・ポト派が日本を標的にする可能性を示唆し、1993年4月16日には、全隊員に撤収命令を出す可能性を伝えました。アンピル村の日本人文民警察官は、自らの安全を確保するため、ポル・ポト派穏健派のニック・ボン准将と接触し、独自に関係構築を試みていました。

1993年5月4日、アンピル班の日本人文民警察官5人は、オランダ海兵隊UNTAC部隊の護衛を受け、同村の国道691号をパトロール中に、ポル・ポト派とみられる武装ゲリラに襲撃されました。先頭車両が対戦車ロケット弾で攻撃され、車列が停止すると、武装ゲリラは自動小銃で一斉射撃を開始しました。オランダ海兵隊も応戦しましたが、高田警部補は現場で死亡し、他の4人の日本人文民警察官も重傷を負いました。また、オランダ海兵隊員5人も重傷を負いました。武装ゲリラは、ポル・ポト派の村へ向かって逃走したとされていますが、UNTACや日本政府は、ポル・ポト派の襲撃であると断定はしていません。

死後

事件後、カンボジアからの撤退論も出ましたが、当時の内閣総理大臣宮沢喜一は撤退を否定し、事件をPKOへの挑戦と捉えました。しかし、この事件以降、2006年末に東ティモールへ派遣されるまで、警察のPKO派遣は行われませんでした。

高田の墓は、倉敷市中央公園墓地にあり、1997年にはプノンペン郊外のタン・コサーン寺院に慰霊碑が建立されました。2012年には皇太子徳仁親王（今上天皇）も献花に訪れています。

倉敷南高校の同級生らは、「高田晴行基金」を設立し、寄付を募り、カンボジアの発展や子供たちのために使われています。殉職場所には、「TAKATA HARUYUKIスクール（小学校）」が建設され、村名も「ハル村」に改称されました。

人物

高田は「世界平和の実現に貢献したい」という強い思いを持ち、海外での大使館勤務を希望していました。また、殺害された当時は、2人の幼い息子の父親でした。

参考文献

旗手啓介著『告白　あるPKO隊員の死・23年目の真実』（講談社、2018年）

関連項目

中田厚仁
国際連合カンボジア暫定統治機構

外部リンク

* 尊い命が失われたカンボジアＰＫＯを評価、検証し、未来の政策に活かすことに関する質問主意書（衆議院）

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