甘露寺親長

甘露寺親長（かんろじ ちかなが）

甘露寺親長は、室町時代中期から戦国時代にかけての公卿で、甘露寺家を代表する人物です。左大弁・甘露寺房長の子として生まれ、幼名は「めめ」と呼ばれていました。8歳で父を亡くし、従兄弟の甘露寺忠長に養育されますが、忠長が足利義教の不興を買ったため、家督を継承することになります。

若年期と家督相続

1437年、14歳で叙爵し、親長と名乗ります。貞成親王の記録によれば、囲碁や蹴鞠に秀でていたとされています。翌年には元服し、本格的に官人としての活動を始めました。甘露寺家は、勧修寺流の嫡流として、朝廷の実務を担う家柄であり、記録や文書を重視していたため、「日記の家」とも呼ばれていました。しかし、家伝の記録や文書の多くは、先代の忠長から引き継がれず、忠長の母が保持し、売却されていたため、親長はこれを取り戻すことに苦心します。また、家督相続を巡り、忠長の遺児から訴訟を起こされるなど、初期には困難を伴いました。

朝廷での活躍

親長は、左衛門佐を経て、従五位上に叙せられます。1443年には、南朝の遺臣が内裏に侵入した事件（禁闕の変）で、自ら太刀を振るって後花園天皇を守護したという逸話が残っています。その後も順調に昇進を重ね、右少弁、蔵人、権右中弁などを歴任します。1452年には参議に昇任し、右大弁に転じました。権中納言であった1456年には、陸奥出羽按察使に任ぜられ、以後長年にわたり同職を務めました。また、賀茂伝奏も務めました。

応仁の乱と文化復興

応仁の乱では、戦火により自宅が焼失し、勧修寺や鞍馬寺に避難しましたが、それらも焼失し、家蔵の文書や日記類も失われました。1470年に帰京し再出仕すると、有職故実に通じていたことから、多くの公卿から指導を依頼されました。官位が上がることを固辞しつつも、文献の書写や部類記の作成に力を注ぎ、後土御門天皇の命で『皇代暦』を増補し、献上しました。親長による書写によって、現代に伝わる文献も多く、『吉記』や『園太暦』などの写本は、その多くが親長の手によるものです。また、自身の日記である『親長卿記』も、同時代の貴重な史料となっています。

多岐にわたる活動

親長は、遣明船に自ら投資して貿易を行い、利益を得ると共に、朝廷にも投資をさせ財政難を補うなど、経済面でも貢献しました。さらに、『源氏物語』の一筆書写を終えた記念に、大規模な供養歌会を開催するなど、公家文化の復興にも尽力しました。1492年には、周囲の強い薦めで権大納言に就任しましたが、翌年の明応の政変に憤慨した後土御門天皇が退位を決意すると、これを諌め、すべての官を辞して出家しました。法名を蓮空と名乗り、1500年に美濃国で没しました。享年77歳でした。

甘露寺親長の系譜

甘露寺親長の父は甘露寺房長、母は不詳です。妻も不詳ですが、美濃斎藤氏の娘ではないかと言われています。多くの子に恵まれ、万里小路春房、甘露寺元長、了淳、長深などの男子と、親子、真盛、朝子などの女子がいました。また、養子や猶子もおり、その中には、後に興正寺の住職となる蓮教や、三条西実隆もいました。

甘露寺親長は、激動の時代を生き抜き、朝廷や文化の発展に大きく貢献した人物として、後世に名を残しています。

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