園田孝吉

園田孝吉（1848-1923）は、日本の近代化を象徴する外交官、実業家、そして男爵でした。薩摩藩士の家に生まれた彼は、藩内騒動をきっかけに養子縁組を経験し、その後、洋学を修め、維新後の日本社会で頭角を現していきます。

若き日の園田は、鹿児島の洋学校「開成所」で英学を学びました。そこでは有島武郎の父、有島武らと共に学んだと伝えられています。維新後には大学南校で学びを深め、1871年、外務省に入省。翌年から約15年に渡りイギリスへ赴任し、外交官としてのキャリアを積みました。

イギリス滞在中は、単身赴任であったため、最初の妻である澤子を失う悲しみを経験しました。その後、帰国した園田は、井上馨の紹介で富永銈子と再婚。才媛として知られた銈子は、後に園田と共にロンドンへ渡り、ロンドン総領事夫人として活躍しました。彼女が著した『満鮮旅行記』は、現在も貴重な記録として残されています。

1889年に帰国した園田は、松方正義の推薦により横浜正金銀行頭取に就任。日本の金融界の中枢で活躍しました。しかし、1897年には持病により頭取を辞任。その後も、十五銀行頭取や帝国倉庫運輸株式会社社長など、数々の要職を歴任し、実業界に大きな貢献を果たしました。

彼の功績は高く評価され、1918年には男爵の爵位を授与されました。しかし、持病の悪化により1915年に全ての役職を退き、神奈川県中郡吾妻村（現・二宮町）の別荘で隠居生活に入ります。東京倶楽部理事や帝国運輸倉庫社長など、いくつかの役職は継続していたものの、静かな日々を送っていました。

1923年、関東大震災が日本を襲いました。園田は、二宮の別荘で震災に巻き込まれ、圧死しました。享年76歳でした。彼の東京にあった邸宅は白金三光町（現在の白金、白金台）にあり、二宮の別荘跡地は後に東京帝国大学農学部附属農場となり、果樹園として利用されました。

園田孝吉の家族もまた、時代を彩る個性的な面々でした。ロンドンで生まれた長女・峰子は、伯爵で大学教授の林博太郎と結婚しましたが、若くして病没。三女・米は東洋綿花創業者児玉一造と結婚しました。そして、二男の武彦は家督を相続し、貴族院男爵議員を務めました。

園田孝吉の生涯は、激動の時代の日本において、外交と実業界の両面で活躍した稀有な存在であったことを物語っています。彼の功績は、近代日本の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。彼の生きた時代、そして彼が果たした役割を理解することで、日本の近代史をより深く理解することができるのではないでしょうか。

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