土佐光芳

土佐光芳：江戸時代中期の土佐派を支えた絵師

土佐光芳（とさ みつよし/みつふさ、1700年7月20日-1772年9月26日）は、江戸時代中期に活躍した、土佐派を代表する絵師です。幼名は藤満丸、法名は常覚。

光芳は、土佐光祐（光高）の子として生まれました。幼い頃から優れた画才を示し、将来を嘱望されていました。しかし、11歳の時に祖父・土佐光成、そして4ヶ月後に父・光祐を相次いで亡くすという不幸に見舞われます。幼いながらも、従六位上・絵所預の地位を継承し、土佐家の家督を担うことになりました。

その後、光芳は順調に昇進を重ねます。17歳で正六位下・左近衛将監、26歳で従五位下、翌年には大蔵少輔、32歳で従五位上、38歳で正五位下と、着実に位階を上げていきました。さらに、39歳で弾正少忠、43歳で左京少進に任じられるなど、華々しい経歴を築きます。これは、それまでの土佐家当主にはなかった安定した地位の獲得であり、光芳以降の土佐家当主の地位確立に大きな影響を与えました。

しかし、土佐家は代々絵所預の地位にあったものの、安定した家禄はなく、仕事に応じた画料のみで生計を立てていました。光芳は、享保9年（1724年）に嘆願書を提出、御月扇料として御台所10人扶持方となり、安定した財政基盤を確立することに成功しました。

光芳は、家督を継いだ長男・光淳と、次男・光貞に分家させることで、土佐家の組織を拡大する経営手腕も発揮しました。これにより、土佐家は安定した体制を築き、幕末まで続く礎を築いたと言えるでしょう。

光芳の優れた経営手腕は、家政運営だけでなく、作品管理にも表れています。享保19年（1730年）、徳川吉宗の依頼を受け、土佐家に伝わる絵巻や屏風の粉本目録である『土佐家所持絵巻目録』を提出しました。依頼からわずか7日後の迅速な提出は、光芳が自家の粉本を既に整理済みであったことを示唆し、家蔵品の管理能力の高さを物語っています。その後、吉宗の求めに応じて粉本を献上したとされ、『将軍御覧絵本目録』も現存しています。さらに、自家の系譜を明らかにするため『土佐派系図』を作成するなど、家系の正当性を示すための努力も怠りませんでした。

光芳の芸術的才能は、元文3年（1738年）の桜町天皇の大嘗会における悠紀主基屏風の制作という栄誉にも表れています。これは、光芳の画技と地位が朝廷からも高く評価された証左と言えるでしょう。

延享3年（1746年）、光芳は眼病を患い、職を辞して剃髪、常覚と号しました。明和9年（1772年）、73歳で生涯を閉じ、知恩寺に葬られました。法名は貫綜院安誉練諦常覚居士です。

光芳は、優れた画家であると同時に、土佐家の発展に貢献した優れた経営者でもありました。彼の功績は、土佐派の隆盛と、その後の歴史に大きな影響を与えたと言えるでしょう。彼の作品や活動に関する記録は、様々な文献や研究論文に散見されます。それらの研究成果を紐解くことで、江戸時代中期の絵画史における光芳の重要性を改めて認識することができるでしょう。

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