土居通芳

土居通芳（どい みちよし）は、日本の映画監督であり、脚本家としても活躍した人物です。1926年12月9日に東京で生を受け、1975年3月16日に惜しまれつつ48歳でその生涯を閉じました。脚本を手がける際は「北一郎」というペンネームを使用。また、シャンソン歌手として知られる石井好子は義姉（土居の兄の妻）にあたります。

親しい仲間からは「ツーホーさん」の愛称で親しまれていたことからも、その温かい人柄がうかがえます。

映画人としてのキャリアは、1948年に上智大学経済学部を卒業後、新東宝に入社したことから始まりました。助監督として、阿部豊や渡辺邦男といった大御所の指導を受け、映画制作の基礎を築きます。1954年にはチーフ助監督に昇進し、現場の中心的存在となる一方、脚本執筆にも力を入れ始めました。

監督デビューは1958年、高倉みゆき主演の『不如帰』でした。新東宝を率いた大蔵貢社長の覚えがめでたかった土居は、デビュー作にして当時の大型企画であったカラー・シネスコ作品を任されるという異例の抜擢を受けます。その後も土居と高倉のコンビで多くの作品が生み出され、周囲には羨望の声もあったといいます。土居と親交のあった赤坂長義は、彼を「天才的に世渡りがウマイ」と評しています。新東宝では計12本の映画を監督しました。

1962年に『嫉妬』を監督した後、活躍の場をテレビ映画へと移します。時代劇、サスペンス、アクションなど、多岐にわたるジャンルの人気テレビシリーズでメガホンを取り、映像作家としての手腕を発揮しました。

劇場用映画としては、1973年に砂塚秀夫が企画・製作・主演を務めた『毘沙門天慕情』（東宝配給）が最後の作品となりました。

1975年3月16日、病のため逝去しました。義姉の石井好子によれば、病床で「次は空海を撮りたい」と創作への意欲を語っていたといいます。葬儀は当初、家族のみで簡素に行う予定でしたが、映画界や芸能界からの弔問者が後を絶たず、結果として故人の人望を物語る盛大なものとなりました。葬儀委員長は三船敏郎、友人総代は萬屋錦之介、司会は桂小金治が務めるなど、錚々たる顔ぶれが並びました。遺作となったのは、死去の約1ヶ月後に放送されたテレビ時代劇『破れ傘刀舟悪人狩り』（NET系）の第30話「ささやいた死美人」です。

私生活では、新東宝の女優（第三期スターレット）だった芝田良子を妻に迎えています。

土居通芳は、短命ながらも新東宝の劇場用映画からテレビシリーズまで、幅広いフィールドで精力的に活動し、多くの作品を残しました。その才能と人柄は、今なお映画・テレビ界の歴史に名を刻んでいます。

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