赤坂長義

赤坂 長義

赤坂 長義（あかさか ながよし／ちょうぎ）は、1921年（大正10年）1月3日に生まれ、1994年（平成6年）6月26日に亡くなった、日本の多才な映像人であり教育者です。脚本家、映画監督、テレビドラマ演出家、著述家、そして大学教員として、幅広い活動を展開しました。また、日本映像学会の会員としても知られています。

その生涯は、東京府東京市神田区小川町（現在の東京都千代田区神田小川町）で始まりました。父は、当時神保町に店を構えていた東京堂（現在の東京堂書店）の支配人でした。旧制第一高等学校に進学した赤坂は、在学中の1940年（昭和15年）頃、後の思想史家として知られる橋川文三と同級生となり、彼に保田與重郎の著作などを勧めるなど、思想・文学的な交流を深めました。自身も詩作に熱心に取り組み、詩誌『歴程』の同人として活動するなど、文学への造詣も深かったことがうかがえます。第二次世界大戦中の1942年（昭和17年）に第一高等学校を卒業後、東京帝国大学（現在の東京大学）文学部へと進学しました。

戦後、1947年（昭和22年）に設立された映画会社、新東宝に入社し、映画製作の現場で助監督としてのキャリアをスタートさせました。その後、脚本執筆にも才能を発揮し、1950年（昭和25年）には自身が手掛けたストーリーが採用され、島耕二監督によって『君と行くアメリカ航路』として映画化されるに至ります。井上梅次監督らの助監督を務める傍ら、大映東京撮影所（現在の角川大映撮影所）で島耕二監督が撮った『十代の性典』の脚本を担当するなど、他社作品にも関わりました。新東宝でも、井上梅次、内川清一郎、中川信夫といった監督たちの作品に脚本を提供し、精力的に活動しました。

映画界での経験を積む一方で、勃興期を迎えていたテレビジョン放送の世界にも積極的に関わります。1955年（昭和30年）には、ラジオ東京テレビ（現在のTBSテレビ）が製作した生放送の連続テレビドラマ『日真名氏飛び出す』の演出家として抜擢され、テレビドラマの草創期を支えました。さらに、1957年（昭和32年）には新東宝で『角帽と女子大三人娘』により映画監督としてもデビューを果たし、『美男剣競録』、『スター毒殺事件』、『ヌードモデル殺人事件』、スーパー・ジャイアンツシリーズの『続スーパー・ジャイアンツ 悪魔の化身』、『続スーパー・ジャイアンツ 毒蛾王国』など、多様なジャンルの作品を手がけました。

1961年（昭和36年）5月に新東宝が製作を停止し、同年8月に倒産を迎えると、赤坂は活躍の場をテレビへと本格的に移しました。東映が製作したテレビ映画『ナショナルキッド』の監督を務めたのを皮切りに、1960年代を通じて多くのテレビ映画やテレビドラマの脚本を手がけました。代表的な作品には、テレビドラマシリーズ『七人の刑事』や、大映テレビ室とTBSが製作した『人間の條件』（監督・脚本も担当）などがあります。しかし、1968年（昭和43年）に日本テレビで監督を務めたテレビ映画シリーズ『特別捜査本部』を最後に、テレビ界の第一線から離れることになります。

1980年（昭和55年）頃からは、雑誌『映画芸術』に寄稿するなど、評論活動も行いました。この時期にはすでに多摩美術大学で教鞭を執っており、後進の育成に力を注いでいました。1982年（昭和57年）には、多摩美術大学で開催された日本映像学会第8回大会で実行委員長を務めるなど、映像研究分野への貢献もありました。著述家としては、H・G・ウェルズの『月世界旅行』の翻訳や、共著『シリーズ・現代の子どもを考える 2「テレビ」』などを発表しています。

脚本家、監督、演出家として数々の映像作品に携わる傍ら、教育者、研究者、著述家としても多角的な活動を展開した赤坂長義は、多摩美術大学に在職中の1994年（平成6年）6月26日、満73歳でその生涯を閉じました。その多彩なキャリアは、戦後の日本映画界からテレビ界の黎明期、そして映像研究・教育分野に至るまで、日本の映像文化の変遷を映し出しています。

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