土屋清

土屋 清（つちや きよし）

日本のジャーナリストであり、著名な経済評論家としても知られる土屋 清は、1910年（明治43年）10月5日に東京に生まれ、1987年（昭和62年）3月22日に生涯を閉じた。

生い立ちと思想的形成

東京府立第一中学校、第一高等学校を経て、1930年（昭和5年）に東京帝国大学経済学部に入学。在学中、河合栄治郎の演習に参加し、大きな影響を受けることとなる。河合が掲げた「理想主義」「人格主義」に深く共鳴し、マルクス主義にもファシズムにも与しない独立した立場に感銘を受けた。卒業後も師との関係は続き、河合栄治郎事件で弾圧された際には、その支援に尽力した。

ジャーナリストとしてのキャリア

1933年（昭和8年）に東京帝国大学を卒業後、朝日新聞社に入社。記者として経験を積んだ後、1945年からは論説委員として、戦中・戦後の激動期における日本の社会経済問題について論陣を張った。1964年（昭和39年）には産経新聞社に移籍し、常務、専務といった要職を歴任。しかし、1969年に社長が交代し、新聞社の方針が日米安全保障条約堅持へと転換したことを機に、産経新聞社を退社した。これを契機に、ジャーナリズムの第一線から離れ、経済評論家としての活動に専念することになる。

経済評論家としての活動

産経新聞社を退社してからは、経済評論家として日本の言論界で重要な役割を果たした。特に、戦後の高度成長期には、円城寺次郎らとともに、政府の様々な審議会において委員を務め、専門家としての知見を提供した。関わった審議会は多岐にわたり、経済審議会、国土総合開発審議会、産業構造審議会、税制調査会、石油審議会などが挙げられる。これらの場では、単なる専門家としてだけでなく、鋭い論客として政府の経済政策に対し積極的に提言を行い、その決定に少なからぬ影響力を行使した。特に、通産省の諮問機関である石油審議会では、発足当初から委員を務めていたが、政府の石油政策を批判し、1983年（昭和58年）に委員を辞任するという姿勢を示したことでも知られる。また、中東経済研究所の会長や総合政策研究会の理事長を務めるなど、経済関連の団体においても指導的な立場にあった。

社会活動とメディア出演

土屋 清は、ジャーナリズムや経済評論の世界だけでなく、社会思想の分野でも活動を展開した。河合栄治郎の門下生の中心人物の一人として、山田文雄、木村健康、石上良平、関嘉彦、猪木正道らとともに、1946年（昭和21年）に社会思想研究会を立ち上げたことは特筆される。この研究会の出版部門は、後に社会思想社として広く知られるようになった。彼はその後も同系統の研究団体に積極的に参加し、思想的探求を続けた。また、テレビメディアにも登場し、特にTBS系の討論番組『時事放談』では、小汀利得の降板後に細川隆元、藤原弘達、加藤寛らとともに「四人組」と称されるレギュラー出演者となり、約10年間にわたり時事問題について論じた。

後進の育成と親族

多くの弟子を育成したことでも知られ、佐藤寛行、田久保忠衛、三宅正也、吉田忠雄、和波英郎などが彼の薫陶を受けた。私生活では、娘婿に当たる新欣樹が通産省中小企業庁長官や電源地域振興センター理事長を務めている。

著作活動

経済、ジャーナリズム、社会思想など、幅広い分野で精力的に執筆活動を行い、多数の単著、共著、編書、訳書を残した。代表的な単著には『日本経済の基本動向』、『経済大国・虚像と実情』、『エコノミスト五十年』などがあり、自身の思想や経済観、ジャーナリストとしての歩みを記している。また、社会思想研究会を通じて、河合栄治郎らの思想を継承・発展させる著作にも携わった。その著作は、戦前、戦中、戦後を通じて日本の社会経済状況を論じた貴重な資料となっている。

土屋 清は、河合栄治郎の思想を継承しつつ、激動の昭和期をジャーナリスト、そして経済評論家として駆け抜け、政府の政策形成や社会思想の発展に寄与した、日本の言論界における重鎮の一人と言えるだろう。

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