土断

土断（どだん）とは

土断とは、五胡十六国時代の東晋、南北朝時代の南朝宋において実施された、現住地で戸籍を登録・課税する戸籍登録法です。

概要

土断の発想は西晋時代に遡ります。後漢末から三国時代の戦乱によって多くの流民が発生し、本籍地を基準とする課税制度では、本籍地を離れた流寓者は課税対象外となっていました。琅邪王氏のような大族や、土地を持たない人々が豪族の私有民となることも多く、政府の統制が及ばない状況でした。

西晋が天下を統一すると、地方出身者が首都洛陽に住み着くケースが増加しましたが、彼らもまた無戸籍者として課税対象にはなりませんでした。衛瓘や司馬亮らは、武帝に対し、現住所に本籍を移すことで課税対象を拡大する土断を献策しましたが、実行には至りませんでした。

東晋の建国以降、華北から江南へ多くの漢民族が移住しましたが、彼らの多くは華北を本籍としており、江南では流寓者として扱われました。江南は人口密度が低く、豪族が割拠する状態であり、中央集権化が進んでいませんでした。東晋にとって、この状況は西晋よりも深刻でした。

そこで東晋および南朝の各王朝は、移住者に対し現住地で戸籍を編成し、豪族の私有民化を防ぐとともに、課税対象を拡大して軍事・財政を強化しようとしました。これが土断法です。しかし、東晋自体が流寓者の政権であったため、桓温や劉裕のような実力者でなければ実行できませんでした。東晋における土断としては、興寧2年（364年）の庚戌の土断が知られています。

当時の税徴収や徴兵は戸籍に基づいて行われており、戸籍から離れた住民は原戸籍に戻されていたため、南朝の各王朝は、後漢末以来の兵乱で減少した人口を華北に戻したくないという事情もあり、土断は不可欠な政策でした。

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