土曜日の恋人

山下達郎「土曜日の恋人」：1980年代を彩る、ノスタルジックな一曲

1985年11月10日、山下達郎の15枚目のシングル「土曜日の恋人」がリリースされました。この曲は、当時大人気だったフジテレビ系番組『オレたちひょうきん族』のエンディングテーマとして起用され、瞬く間に多くの人々の耳に届きました。

60年代へのオマージュと80年代デジタルサウンドの融合

山下達郎自身によると、「土曜日の恋人」の構想は1982年頃から温めていたそうです。彼は、1960年代のスナッフ・ギャレットがプロデュースしたボビー・ヴィーやゲイリー・ルイス＆ザ・プレイボーイズといったアーティストの作品からインスピレーションを受け、その雰囲気を再現しようと試みました。しかし、80年代のデジタル・メディアの技術を用いて60年代のサウンドを表現することは容易ではありませんでした。そのため、完成までに多くの時間と労力を費やしたと語っています。

当初は「永遠のマルディグラ」というタイトルで、マルディグラをテーマにした曲を目指していましたが、最終的には「土曜日の恋人」というタイトルに落ち着きました。完成した楽曲が『オレたちひょうきん族』のイメージにぴったりとフィットしたことから、番組への提供が実現し、後にアルバム『POCKET MUSIC』に収録されることとなりました。

複数のミックスが存在する「土曜日の恋人」

「土曜日の恋人」には、シングル用とアルバム用でそれぞれ異なるミックスが存在しており、全部で4種類のミックスが存在します。その後、『POCKET MUSIC』の再発やベストアルバムへの収録において、ミックスが変更されたり、新たなミックスが追加されたりしています。現在では、エフエム北海道（AIR-G'）の番組「オレたち転勤族」のエンディングテーマとしても使用されています。

カップリング曲「MERMAID」：79年から85年までの道のり

カップリング曲として収録された「MERMAID」は、1979年に作曲された楽曲ですが、ベースのパターンに修正が必要だったため、完成までには数年を要しました。山下達郎は、コンピューター技術の進歩を活かし、1985年にようやく完成にこぎつけたといいます。ジャケットの裏面に“英語盤”と表記されているのは、当初は日本語詞で収録する予定だったためです。しかし、日本語詞がメロディーと合わなかったため、最終的にはアラン・オデイによる英語詞のバージョンが採用されました。

「土曜日の恋人」と「MERMAID」、両曲のオリジナル・ミックスは、2020年リリースの『POCKET MUSIC (2020 Remaster)』のボーナストラックとして収録されています。

パッケージとアートワーク

シングルのジャケット表面には、『オレたちひょうきん族』のコンピューターグラフィックによるオープニングシーンが使用されています。番組とのタイアップを象徴するデザインとなっています。

楽曲クレジットとレコーディングメンバー

「土曜日の恋人」と「MERMAID」には、数々のトップミュージシャンが参加しています。山下達郎本人はもちろん、青山純、伊藤広規、難波弘之、山川恵子など、日本の音楽シーンを代表するミュージシャンたちが、この楽曲に彩りを添えています。

まとめ

「土曜日の恋人」は、山下達郎の音楽性と、当時のテレビ番組とのコラボレーションによって生まれた、時代を象徴する一曲です。60年代へのオマージュと80年代のデジタルサウンドの融合、そして完成までの過程に秘められたエピソードは、この楽曲をより深く理解する上で重要な要素となっています。長年にわたって愛され続けている名曲と言えるでしょう。

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