地表集電方式

地表集電方式の概要

地表集電方式は、路面電車に使用される第三軌条方式の一つで、特に美観を保つために架線を必要としない点が特長です。19世紀末に初めて概念が提唱されましたが、技術的限界から長い間使用されることはありませんでした。しかし、21世紀に入ってから、新たな技術革新を経て再びクローズアップされています。この方式は、感電や短絡事故を防ぐために特別な機構が求められます。

集電方式の種類

地表集電方式の中でも、特に注目すべきは地中溝集電方式（コンデュイット方式）です。これは、地面の溝に給電用のレールを敷設する手法で、路面電車だけでなくさまざまな公共交通機関にも応用可能です。

固定接点電極方式

19世紀末にパリで実用化された固定接点電極方式では、車両が通過するたびに給電用レールが短い区間で切り替わり、通電する仕組みが採用されていました。不幸にも、この方法は安全性に欠けたため早期に廃止されました。

イノレール式APS

イノレール式APS（Alimentation par le sol）は、フランスのアルストムの子会社により開発された画期的なシステムです。このシステムでは、給電用レールが線路の中央に配置され、8mの給電区間と3mの絶縁区間が交互に設けられています。車両に設置された接地アンテナが誘導電流を生成し、これを地上の誘導コイルが受信し、必要な部分にのみ通電する仕組みです。このAPSシステムの特筆すべき点は、受電に失敗した場合でも車載バッテリーによって最大400mまで自走可能なことです。

ボルドーの導入例

フランスのボルドー市では、当初地下鉄の建設が計画されていたものの、1990年代に路面電車への変更が決まりました。この際、歴史地区の景観を守るために架線なしのイノレール式APSが採用され、2003年に運行がスタートしました。ボルドーの車両は、アルストムによってAPSに対応するように改良されたシタディス型が使用されています。特に景観に配慮が必要な場所や橋の上ではAPS方式が利用されており、郊外では従来の架線集電方式が継続されています。ただし、郊外においても訓練用や緊急出動のために短いAPS区間が存在します。

このシステムの設置コストは通常の架線よりも3倍高いのですが、建設全体においてはコストの上昇は約5%にとどまりました。運行開始直後は故障が多発していたものの、制御ボックスの改良が進むにつれ運行の安定性は向上し、2007年には年あたりの運休時間が10時間程度に減少しました。

その他の都市での採用

フランス国内では、アンジェ、ランス、オルレアンなどの地域でもAPSの導入が進められています。また、国際的にはアラブ首長国連邦のドバイ、ブラジルのブラジリアでも導入が計画されています。ニースではAPSが検討されましたが、最終的にはバッテリー駆動方式が選ばれて開業しています。

その他の地表集電方法

他にもスタッド・コンタクト式や暗渠集電式、さらには磁力吸引集電式などが存在しますが、これらはそれぞれに利点と課題があり、特定の地域や条件でのみ採用されています。世界各地でさまざまな地表集電方式の研究と実用化が進行中であり、今後の発展が期待されています。

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