坪井信道

坪井信道：蘭方医学の先駆者とその一族

坪井信道（つぼい しんどう、寛政7年1月2日〈1795年2月20日〉 - 嘉永元年11月8日〈1848年12月3日〉）は、江戸時代後期に活躍した蘭方医です。父は坪井信行であり、家系は織田信長に繋がるとも伝えられています。

生涯

美濃国池田郡脛永村（現在の岐阜県揖斐郡揖斐川町）に生まれた坪井信道は、幼くして両親を亡くしました。当初は東洋医学を学んでいましたが、文政3年（1820年）に江戸へ出て、宇田川榛斎のもとで蘭方医学を本格的に学び始めました。文政12年（1829年）には江戸深川に安懐堂、天保3年（1832年）には江戸冬木町に日習堂という家塾を開き、後進の育成に尽力しました。天保8年（1837年）には長州藩の藩医に登用され、その医学知識と技術をもって藩に貢献しました。墓所は染井霊園にあります。

医学的業績と著作

坪井信道は、蘭方医学の普及に大きく貢献しました。著書として『診侯大概』があり、翻訳書には『製煉発蒙』、『万病治準』、『扶歇蘭杜神経熱論』などがあります。これらの著作を通じて、当時の医学界に新たな知識と技術をもたらしました。

家族と親族

坪井家は、代々医学や学術の世界で活躍した人物を輩出しています。

坪井信良：信道の養子であり、幕府奥医師を務めました。お玉ケ池種痘所の開設にも携わりました。
坪井正五郎：信良の長男で、人類学・考古学者として知られています。妻は蘭学者箕作秋坪の娘です。
坪井誠太郎：正五郎の長男で、地質学・鉱物学者として活躍しました。妻は天文学者平山信の娘です。
坪井正道：誠太郎の長男で、物理化学者として研究に携わりました。妻は法学者中川善之助の娘です。
坪井忠二：正五郎の次男で、地球物理学・地震学者として地震研究に貢献しました。妻は医学者島薗順次郎の娘です。
坪井信友：二世坪井信道。信道の実子。
坪井航三：信友の養子。海軍軍人であり、男爵の爵位を授けられました。
坪井九八郎：航三の長男。実業家、貴族院議員、男爵。
原顕三郎：航三の三男。海軍軍人。
牧野英一：法学者。航三の娘婿。
牧野紀之：牧野英一の孫。哲学者・ドイツ語学者
国枝昌樹：牧野紀之の同上。駐シリア大使。
坪井為春：信道の娘婿であり、薩摩藩医を務めました。山形県米沢の郷医の家に生まれ、坪井信道の弟子となり、娘婿となりました。
坪井次郎：為春の二男で、京都帝国大学医科大学の初代学長を務めました。妻は有賀長雄の妹です。
坪井芳治：次郎の長男で、小児科医として活躍しました。魯迅の息子の主治医を務めたことでも知られています。
斎藤祥男：芳治の娘婿。駿河台大学大学院教授。
* 河合栄之助：次郎の二女・信子の夫。陶芸家。


また、坪井信道の門下生には、緒方洪庵、青木周弼、川本幸民、杉田成卿、黒川良安、桑田立斎など、後の医学界を担う多くの人材がいました。坪井信道の教育者としての側面も、彼の業績を語る上で欠かせません。

大正4年（1915年）には、その功績が認められ、正五位が追贈されました。

坪井信道は、蘭方医学の発展に貢献しただけでなく、教育者として多くの人材を育成し、その一族は代々学術の世界で活躍しました。彼の功績は、日本の近代医学の礎を築いたものとして、後世に語り継がれています。

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