基礎物理学選書

『基礎物理学選書』：日本の大学物理教育を支えた名シリーズ

『基礎物理学選書』は、裳華房が1968年から2008年にかけて刊行した、大学初年級の学生を主な対象とした物理学の教科書シリーズです。実に40年以上にわたる長期にわたり刊行されたこのシリーズは、日本の大学における物理教育に多大な貢献を果たしました。

シリーズの特長

このシリーズの最大の特徴は、その充実した内容と、長きにわたる改訂と継続にあります。時代とともに変化する物理学の知見や教育方法に対応すべく、多くの巻が繰り返し改訂され、常に最新の知見を反映した内容が提供されました。単なる教科書にとどまらず、物理学への深い理解を促すことを目指した、質の高い解説が多くの学生から支持された理由と言えるでしょう。

編集委員の面々

『基礎物理学選書』は、錚々たる編集委員陣によって構成されました。金原寿郎を編集委員長とし、原島鮮、熊谷寛夫、野上茂吉郎、押田勇雄、小出昭一郎といった、物理学界を代表する著名な研究者たちが、シリーズ全体の構成や個々の巻の内容に携わりました。彼らの専門知識と教育経験が、このシリーズの高い水準を支えたと言えるでしょう。

網羅された物理学の主要分野

『基礎物理学選書』は、全27巻から構成されており、力学、電磁気学、量子力学、熱力学、統計力学、物性物理学など、物理学の主要分野を網羅しています。各巻は、それぞれの分野を専門とする第一線の研究者によって執筆され、基礎的な概念から高度な内容まで、丁寧に解説されています。また、演習問題も豊富に収録されており、読者の理解を深めるための工夫が凝らされています。

代表的な巻と著者

シリーズには多くの重要な書籍が含まれますが、その一部を以下に紹介します。

質点の力学、質点系・剛体の力学: 原島鮮
量子論、量子力学Ⅰ、量子力学Ⅱ: 小出昭一郎
熱力学: 押田勇雄、藤城敏幸
電磁気学Ⅰ、電磁気学Ⅱ: 金原寿郎
* 原子核: 野上茂吉郎

これら以外にも、音響学、統計力学、物性物理学、相対性理論など、幅広い分野をカバーする書籍が多数含まれています。各巻は、それぞれ独立して読むことができるように構成されている一方で、全体として有機的につながっており、物理学全体像を理解するための体系的な学習を可能としています。

『基礎物理学選書』の意義

『基礎物理学選書』は、単なる教科書シリーズとしてだけでなく、日本の大学物理教育における重要なランドマークとして位置付けられます。長年にわたり多くの学生を育成し、物理学研究の発展に貢献してきたこのシリーズは、日本の科学技術の発展にも大きく寄与したと言えるでしょう。現在では刊行が終了していますが、その内容は今もなお、物理学を学ぶ者にとって貴重な教材として活用されています。その影響は、現代の物理教育にも色濃く残っていると言えるでしょう。

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