堀之内貝塚

堀之内貝塚：縄文人の生活を今に伝える貴重な遺跡

堀之内貝塚は、千葉県市川市堀之内に位置する、縄文時代後期から晩期にかけての貝塚と環状集落の遺跡です。国の史跡として指定されており、縄文時代の生活様式や文化を研究する上で、非常に重要な場所となっています。

遺跡の概要

貝塚は、下総台地の西端近く、国分川の右岸に形成された谷津にあります。標高約22メートルの尾根状台地とその斜面に広がり、縄文海進期には半島のような地形であったと推測されています。東西225メートル、南北120メートルの中央台状型の斜面には、ハマグリ、アサリ、イボキサゴ、オキシジミといった鹹水産の貝類が堆積した馬蹄形の貝層が形成されています。特に、縄文時代後期前葉の貝層が厚いことが特徴です。貝層の下からは、竪穴建物跡も見つかっており、環状集落の存在が示唆されています。

発掘調査の歴史

堀之内貝塚は、東京に近いことや、かつて未開発の山林であったことから、早い時期から発掘調査が行われてきました。最初の踏査は1883年（明治16年）に行われ、1901年（明治34年）には最初の発掘が実施されました。1904年（明治37年）には東京人類学会が遠足会を実施し、埋葬された人骨が発掘されています。1917年（大正6年）にも、同会33周年記念事業として遠足会が行われました。

1921年（大正10年）には、東京帝国大学による発掘調査に山内清男が参加し、出土した土器を研究して「堀之内式土器」と命名しました。この土器様式は、縄文時代後期前葉の標式土器として、広く知られるようになりました。1949年（昭和24年）から翌年にかけては、立教大学などが3度の発掘調査を行い、貝塚の下層にある関東ローム層から竪穴建物跡を発見しました。

1954年（昭和29年）には、日本人類学会70周年記念事業として、早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学による合同発掘調査が行われ、初めて本格的な地形測量が行われました。1963年（昭和38年）の明治大学の調査によって、貝塚のほぼ全容が明らかにされています。

貝塚の性格をめぐる論争

1960年（昭和35年）には、堀之内貝塚の貝の性格について、芹沢長介が日常生活で食用などに用いられた貝であると主張したのに対し、後藤和民は貝塚を加工用の剥き身場と推定し、干貝などの形で他の地域に移し出されたとする論争が起こりました。この論争は、貝塚の役割や縄文人の生活様式を考える上で、重要な視点を提供しています。

1967年（昭和42年）には、貝層全体が国の史跡に指定されました。

周辺施設

現在、貝塚に隣接して市川考古博物館が建設され、姥山貝塚など周辺の貝塚からの出土品が公開されています。また、その隣接地には市川歴史博物館も開設されており、堀之内貝塚から約2キロメートル南の下総国府設置以後の歴史を学ぶことができます。

文化財としての価値

堀之内貝塚は、1964年（昭和39年）7月6日に国の史跡に指定され、1967年（昭和42年）6月22日と1972年（昭和47年）2月3日には史跡範囲が追加指定されています。この遺跡は、縄文時代の文化や生活様式を理解する上で、かけがえのない存在です。

関連情報

姥山貝塚
曽谷貝塚

外部リンク

堀之内貝塚 - 国指定文化財等データベース（文化庁）
堀之内貝塚 - 市川市ホームページ

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