下総台地

下総台地

下総台地は、かつての旧下総国の領域に広がる台地であり、現在の千葉県北部と埼玉県東端の一部にまたがっています。北総台地とも呼ばれ、場合によっては旧上総国の一部を含むこともあります。この台地は、なだらかな起伏が特徴で、安定した地層を有しています。

地理的特徴

下総台地は、主に以下の地域に大別されます。

千葉県北東部：成田市や香取市を中心とする地域。
千葉県北西部：野田市など江戸川沿いから船橋市にかけての地域。
* 埼玉県東端：幸手市、杉戸町、春日部市など江戸川沿いの地域。

台地の標高は概ね20〜40メートルですが、香取市などの利根川沿いでは50メートルを超える場所もあります。地質的には、第四紀の下総層群の上に、関東ローム層が堆積しており、南側の房総丘陵とは異なっています。上総国の一部を含む場合もありますが、一般的には利根川を挟んだ常陸台地と合わせて常総台地と呼ばれることが多いです。

歴史

房総地域では、水に恵まれない丘陵や台地で、牛や馬の放牧地である「牧」が発達しました。下総台地にも多くの牧があり、奈良時代には現在の茂原市付近に牧が開発されました。

牧の歴史と開発

下総台地を含む房総地域では、古代から近世にかけて牧の歴史がありました。『延喜式』には、7つの馬牧と2つの牛牧が記録されています。鎌倉時代から戦国時代にかけては、軍馬供給の馬牧を背景に千葉氏一族が房総を支配しました。

江戸時代に入ると、徳川家康が関東に入国した後、牧は整備され、江戸幕府は小金五牧、佐倉七牧、嶺岡五牧を支配下に置きました。

明治維新後、新政府は旧幕臣らの救済策として、下総台地の小金牧と佐倉牧の開墾を計画しました。開墾は開墾局と三井八郎右衛門高福が率いる開墾会社によって進められ、1869年に入植が開始されました。開墾地は「東京新田」と呼ばれ、入植順に「初富」「二和」「三咲」などの新しい村名がつけられました。しかし、開墾は困難を極め、1869年に開墾会社は解散。その後、農民との間で土地をめぐる裁判闘争が起こりました。

小金牧の跡地は、陸軍の演習場「習志野原」となり、佐倉牧の一部は御料牧場（三里塚）として開発されました。

現在の下総台地

現在の下総台地は、安定した地盤を活かし、東京都心に近い地域では都市化が急速に進んでいます。活断層がなく、岩盤が強固であるため、宅地開発も盛んに行われています。

印旛地域では、千葉ニュータウンや成田ニュータウンといった大規模な団地や、成田国際空港などが建設され、都市化が進んでいます。千葉ニュータウンは、災害リスクを低減できる場所として、企業や金融機関の拠点が増えています。

農業

下総台地は、果樹園や畑に適しており、ナシ、ブドウ、キウイフルーツ、クリ、スイカ、ラッカセイ、サトイモ、サツマイモなどが栽培されています。特に白井市のナシ、富里市のスイカ、八街市のラッカセイは有名です。

八街市周辺では、強風時に乾燥した畑の赤土が砂塵となって舞い上がる現象が見られ、春先の風物詩となっています。この砂嵐を防ぐために造成された山武杉の防風林と、落花生を乾燥させるための「落花ぼっち」は、八街市周辺の特徴的な農村風景として、文化庁の「農林水産業に関連する文化的景観」に選定されています。

まとめ

下総台地は、歴史的には牧場として利用され、開墾を経て農業地帯として発展しました。近年では、都市化も進み、住みやすい場所として注目されています。また、特産品も多く、独特の景観を持つ地域です。

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