堀川
運河は、
宮崎県日南市を流れる広渡川と油津港を結ぶ、全長984メートル、幅約30メートルの
運河です。
江戸時代初期に、木材の輸送を目的として開削されました。
歴史
江戸時代初期、国内では建築需要が高まり、良質な木材の供給が求められていました。
飫肥藩では、良質な杉材である飫肥杉を産出しており、これを各地へ供給していました。しかし、山中で伐採された木材を河口まで運び、そこから集積地である油津港へ輸送する際、大節鼻という岬を迂回する必要があり、約5キロメートルの海上輸送を余儀なくされていました。また、油津港は
台風の被害を受けやすく、船舶の避難場所も不足していたため、船舶の増強が困難でした。
この状況を打開するため、当時の
飫肥藩主であった伊東祐実が
運河の開削を命じました。1684年1月21日に工事が開始され、地盤の固い場所もあり難航しましたが、約2年後の1686年4月17日に完成しました。これにより、木材輸送の効率化が図られただけでなく、船舶の避難場所としても活用されました。1903年には、石造
アーチ橋である堀川橋が架けられ、これは現在、国の
登録有形文化財となっています。
1913年には、飫肥と油津を結ぶ県営鉄道(後の
日南線)が開通し、水運は次第に衰退していきました。1955年頃から、川底に汚泥が堆積したり、一部が埋め立てられたりするなど、
運河は荒廃していきました。
1985年頃から、堀川
運河は観光資源として見直されるようになり、堀川橋を含む周辺の環境整備が進められました。現在では、歴史的な街並みが残る観光名所として知られるようになり、1992年には、堀川橋を舞台に映画「
男はつらいよ 寅次郎の青春」の撮影も行われました。また、2011年には「堀川
運河の歴史と伝統を活かしたまちづくり」が評価され、平成23年度
手づくり郷土賞を受賞しました。
関連項目
油津港
参考文献
永井哲雄 『みやざき文庫19 元禄期の日向
飫肥藩』 鉱脈社、2003年、ISBN 4-86061-055-5。
* 日南市産業活性化協議会編 『油津 −海と光と風と−』 鉱脈社、1993年。