堅壁清野

堅壁清野（けんぺきせいや）

堅壁清野とは、焦土作戦の一種であり、特に城壁に囲まれた市街地に人員を集中させ（堅壁）、城外を徹底的に焦土化する（清野）ことで、敵軍の進攻を遅らせ、疲弊させる戦術です。敵に資源を奪われることを防ぎ、自軍の持久戦を有利に運ぶことを目的としています。清野作戦とも呼ばれます。

歴史

古代中国

堅壁清野は古くから中国で用いられてきた戦法であり、『後漢紀』巻四にもその記述が見られます。また、白蓮教の乱の際に勒保や龔景瀚が用いた策、清のヌルハチを敗走させた袁崇煥の策なども、堅壁清野の一例として挙げられます。

国民革命軍による作戦

日中戦争期には、国民革命軍が日本軍や中国共産党軍に対して堅壁清野を行いました。この作戦では、軍事施設や食糧倉庫だけでなく、田畑や民家までもが焦土化の対象となりました。南京戦の際には、日本軍の遮蔽物となる可能性のある建物をすべて焼却し、南京城壁の周囲1〜2kmの居住区全域や、南京城から半径16km以内の道路沿いの村落と民家を焼き払いました。

国民革命軍はその後も、日本軍の進撃を止めるために黄河を決壊させ、人工的に洪水を起こす黄河決壊作戦や、日本軍が迫ったという流言に惑わされた中国軍による焦土作戦である長沙大火も発生しました。

中華民国陸軍軍官学校出身の朝鮮人将校、崔徳新は、国民革命軍を率いて共産ゲリラ討伐戦術として堅壁清野作戦を実施しました。

韓国軍による作戦

国民革命軍将校であった崔徳新は、第二次世界大戦後に帰国し、朝鮮戦争でも韓国陸軍第11師団長として共産主義ゲリラ討伐のために堅壁清野作戦を実施しました。この作戦は、「必ず確保すべき戦略拠点は壁を築くように堅固に確保し、やむを得ず放棄する地域は人員と物資を清掃し、敵が留まることが出来ないよう野原にする」というものでした。

しかし、この作戦の過程で、多数の住民が犠牲となる痛ましい事件が発生しました。1951年2月7日には、第11師団第9連隊第3大隊が山清郡今西地域芳谷里佳峴村に進撃し、家屋を焼き払い、金目の物を集めた後、村の住民123人を渓谷に突き落としたり、銃殺したりしました。さらに、芳谷村民212名、咸陽郡休川地域桐江里村民60名、花渓里、自恵里と咸陽郡柳林の西洲,蓀谷,池谷村の軍警察の家族以外の住民310名を虐殺し、犠牲者は計705名にのぼりました（山清・咸陽虐殺事件）。

さらに2月9日、居昌郡神院で民家78世帯に放火し、住民80名余を殺戮。2月10日、苽亭里、中楡里、大峴里、臥龍里の全民家を焼き払い、疎開させるという理由で住民を連行し、隊列に遅れた老人20名余を射殺し、女子ども100名余を大峴里担凉渓谷で虐殺しました。2月11日には、神院初等学校に強制収容した苽亭里,中楡里の全住民と大峴里,臥龍里の住民1000名のうち軍警察、公務員、青年防衛隊の家族をのぞく540名余の住民を珀珊渓谷に集め、機関銃などで射殺し、焼却しました。この居昌虐殺事件の犠牲者は719名でした。山清・咸陽と居昌の事件の犠牲者総計は1424名にのぼりました。

関連作品

作家の魯迅は1926年1月「新女性」創刊号で「堅壁清野主義」を発表しました。

関連項目

焦土作戦
燼滅作戦
黄河決壊事件
長沙大火
南京戦
居昌事件
* 戦略村

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