居昌事件

居昌事件（コチャンじけん）とは

居昌事件は、朝鮮戦争中の1951年2月、韓国軍によって慶尚南道居昌郡で発生した民間人虐殺事件です。韓国軍が共産主義パルチザン掃討作戦を実行する中で、無抵抗の住民719人（15歳以上334人と15歳未満385人）が虐殺されました。この事件は、山清・咸陽虐殺事件と合わせて、居昌・山清・咸陽虐殺事件と呼ばれることもあります。

事件の背景

事件の背景には、韓国軍が実施した「堅壁清野作戦」がありました。これは、敵の勢力下にある地域を徹底的に破壊し、敵が利用できないようにする作戦です。この作戦は、中華民国軍で共産ゲリラ討伐戦術を実施した経験を持つ崔徳新が、韓国陸軍第11師団長として指揮しました。

事件の経緯

1951年2月2日、第11師団第9連隊長の呉益慶は、智異山南東部の共産主義ゲリラ掃討のため、堅壁清野作戦を各部隊に通達しました。これを受け、2月7日には山清・咸陽地域で住民虐殺が行われ、705人が犠牲となりました。

2月9日から11日にかけて、居昌郡ではさらに悲惨な事件が発生しました。第9連隊第3大隊は、呉益慶連隊長の指揮のもと、居昌郡から共匪パルチザンを殲滅するとして、住民719人を虐殺しました。

2月9日未明、神院面では民家が放火され、住民80名余が殺害されました。2月10日には、苽亭里、中楡里、大峴里、臥龍里で家屋が焼き払われ、疎開を理由に連行された住民が虐殺されました。大峴里担凉渓谷では、女子ども100名余が虐殺され、その死体は焼却されました。同日午後には、住民1000人が神院初等学校に強制収容されました。

2月11日朝、収容された住民のうち、軍警察や公務員の家族を除いた540名余が珀珊渓谷に連行され、機関銃などで射殺されました。その後、死体は焼かれ、生存確認のため待機していた住民のうち11名も殺害されました。最後に残った1名は、口外しないことを条件に解放されました。

事件後の経過

事件後、居昌出身の議員慎重穆が国会で事件を追及し、政府は調査団を派遣しました。しかし、事件現場は出入禁止とされ、死体の隠蔽工作が行われました。また、調査団への銃撃事件も発生し、調査は妨害されました。李承晩大統領は、犠牲者は共産主義ゲリラを支援した者であると主張し、軍法会議で有罪判決が下されたと発表しました。

しかし、その後捜査が再開され、1951年12月には裁判が行われました。裁判では、呉益慶中領に無期懲役、韓東錫少領に懲役10年の判決が下されましたが、李承晩大統領は彼らを恩赦し、釈放しました。さらに、韓東錫少領は警察幹部に抜擢されるなど、事件の責任者たちが処罰を受けることはありませんでした。

この事件は、李承晩政権に対する国民の反感を高める要因の一つとなりました。李承晩政権崩壊後、遺族による報復事件が発生しましたが、朴正熙政権の成立によって事件は再び隠蔽されました。

1996年になり、ようやく居昌事件などの名誉回復のための特別措置法が制定されました。2001年には遺族が韓国政府を訴えましたが、最高裁判所は国家賠償責任を認めませんでした。2004年には、居昌事件追悼公園が建設され、事件を追悼する場が設けられました。

犠牲者の詳細

犠牲者の総数は719人とされています。内訳は、男性が331人、女性が392人です。15歳未満の子どもが359人から385人、15歳以上60歳未満の大人が294人、60歳以上の高齢者が66人となっています。多くの子どもたちも犠牲になったことが、この事件の悲惨さを物語っています。

責任追及の動き

2010年、韓国政府機関の調査官が、韓国軍の作戦命令に「敵の支配下にあるものは全員銃殺せよ」と明記されていたことを公表しました。しかし、調査官は解任され、事件の真相解明は困難な状況にあります。事件はジェノサイド（集団殺害罪）、人道に対する罪に該当する戦争犯罪であるとする声も上がっています。

関連項目

保導連盟事件
フォンニィ・フォンニャットの[[虐殺]]
* 堅壁清野

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