塩野宜慶

塩野宜慶の生涯と司法への貢献

塩野宜慶（しおの やすよし）は、1915年5月23日に生まれ、2011年1月22日に95歳で生涯を閉じました。彼は、日本の法律家として、そのキャリアを通じて法務行政と司法の発展に大きく貢献しました。特に、法務事務次官、東京高等検察庁検事長、そして最高裁判所判事という重要な役職を歴任したことは、彼の卓越した能力と深い法律知識を物語っています。

生い立ちと教育

塩野宜慶は、司法大臣を務めた塩野季彦の長男として生まれました。父方の祖先は旧松代藩士の家系であり、長野県松代町を本籍地としましたが、東京で育ちました。東京府立第一中学校、府立高等学校を経て、1939年に東京帝国大学法学部を卒業しました。大学卒業後、高等文官試験司法科に合格し、検察官としての道を歩み始めました。

検察官としてのキャリア

検察官として、塩野は東京地検刑事部長、東京地検公判部長、法務総合研究所第一部長、甲府地検検事正、東京地検検事正などの要職を歴任しました。東京地検検事正時代には、石油ヤミカルテル事件の捜査を指揮し、日教組事件では槙枝元文委員長ら日教組幹部を起訴するなど、数々の重要な事件に関わりました。これらの事件は、当時の社会に大きな影響を与え、塩野の検察官としての手腕を広く知らしめました。

法務事務次官と日米司法協力

ロッキード事件の捜査が展開された時期には、法務事務次官として、アメリカ側からの資料入手のため、日米司法共同協定の締結に尽力しました。この協定は、国際的な犯罪捜査における協力体制を強化する上で重要な一歩となりました。

東京高等検察庁検事長と弁護士活動

その後、東京高等検察庁検事長を務め、定年退官後は半年ほど弁護士登録をしていました。この短い弁護士活動は、彼の法律家としての多様な側面を示すものでした。

最高裁判所判事としての活動

1979年4月2日、塩野宜慶は最高裁判所判事に就任しました。最高裁判事として、彼は数々の重要な判決に関与しました。特に、「四畳半襖の下張事件」では、文書の猥褻性判断基準を示し、「大日本印刷採用内定取り消し訴訟」では、雇用契約における企業側の採用の自由について一定の歯止めをかける判決を下しました。これらの判決は、その後の司法判断に大きな影響を与えました。また、大阪空港訴訟については、法務事務次官としての経歴から回避しました。

退官と晩年

1985年5月に定年退官し、1987年には勲一等瑞宝章を受章しました。2011年1月22日、95歳で肺炎によりその生涯を閉じました。彼の死は、日本の法曹界にとって大きな損失であり、その功績は長く語り継がれるでしょう。

参考文献

野村二郎『最高裁全裁判官：人と判決』三省堂、1986年。ISBN 9784385320403
野村二郎『日本の裁判史を読む事典』自由国民社、2004年。ISBN 9784426221126

もう一度検索