境漁港

境漁港（さかいぎょこう）

鳥取県の西部、弓浜半島の最北端に位置する境漁港は、国の定めた特定第3種漁港です。日本海の広大な海域で行われる沖合漁業において、その活動を支える中核的な拠点としての役割を果たしています。北側には島根半島が天然の防波堤のように存在しており、古くから波穏やかな、漁港としての利用に適した地形の利点を生かしてきました。

ただし、港湾法に基づく重要港湾である「境港」とは、その区域が明確に区分されています。境漁港は、境港の第一区の南側に隣接していますが、漁港法によって定められる区域は、境港の港湾区域から除外されており、それぞれの港湾管理を担う組織も異なります。

港の整備と歴史

境漁港の近代的な整備は、大正時代にまき網漁業が発達し始めたことを契機に始まりました。特に、1955年（昭和30年）から開始された第2次漁港整備長期計画以降は、本格的な整備事業が推し進められました。その重要性の高まりを受けて、1953年12月28日に第3種漁港に指定され、さらにその役割が拡大したことにより、1973年2月23日にはより位置づけの高い特定第3種漁港へと指定されています。

水揚実績と全国における地位

境漁港は、過去には日本の漁港の中でも特に顕著な水揚量を記録しました。マイワシの漁獲が大きく増加した時期には、1986年（昭和61年）から1994年（平成6年）まで9年連続で年間50万トンを超える水揚量を達成しました。中でも1992年（平成4年）から1996年（平成8年）にかけての5年間は、連続で全国の水揚量でトップの座を占めるなど、その規模は日本を代表するものでした。近年においても、2019年の実績では水揚量85,000トンで全国7位、水揚金額211億円で全国5位となっており、現在も国内の主要な漁港の一つとしての地位を維持しています。

管理組織と市場機能

境漁港の管理主体は鳥取県です。港で活動する漁業者をまとめる組織としては、鳥取県漁業協同組合があり、2001年（平成13年）12月時点では258名の組合員が活動に参加していました。この漁港には3430110の漁港番号が付与されています。

漁港に隣接する形で、水産物の取引を行うための「鳥取県営境港水産物地方卸売市場」が設けられています。この市場の歴史は古く、1951年（昭和26年）に境町営魚市場として開設されたことに遡ります。その後、鳥取県営境港魚市場への改称を経て、1973年（昭和48年）に現在の鳥取県営境港水産物地方卸売市場となりました。市場の運営管理は、鳥取県境港水産事務所と、指定管理者である境港水産物市場管理株式会社が共同で行っています。

豊富な水産物と主な漁法

境漁港には、実に多様な魚介類が水揚げされます。沖合でのまき網漁業によって漁獲されるアジ、サバ、イワシ類と、かにかご漁業で捕獲されるベニズワイガニが、年間を通して主な漁獲対象となっています。

これらに加え、沿岸で行われる漁業からは、季節の移り変わりと共に様々な旬の魚が水揚げされます。例えば、

春: サヨリ、メバル、カレイ類
夏: 本まぐろ（クロマグロ）、白いか（ケンサキイカ）、スズキ、イワガキ
秋: ハタハタ、シラス（イワシ類稚魚）、サワラ
冬: 松葉がに（ズワイガニ）、ブリ、スルメイカ

といった魚種が、それぞれの季節に豊富に揚がります。特に生クロマグロについては、2005年から2016年まで12年連続で陸揚量全国1位を記録するなど（2016年は1417トン）、全国的に見ても突出した実績があります。また、2002年にはイカ類が全国4位、サバとカレイ類がそれぞれ全国5位となるなど、多くの主要魚種で高い水揚量を維持しています。

境漁港で行われる主な漁業としては、

大規模なまき網漁業
かご漁業
イカ釣りなどを含む釣り漁業
沖合底引き網漁業

などがあり、これらの多様な漁法によって、一年を通じて様々な種類の水産物が市場に供給されています。

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