境部雄摩侶

境部雄摩侶について

境部雄摩侶（さかいべ の おまろ）は、飛鳥時代における重要な豪族の一人であり、姓は臣、冠位は大徳です。彼は蘇我氏系列の「境部臣氏」に属し、親族には境部臣摩理勢がいます。大徳という位階は、当時の大和政権における雄摩侶の発言力を示しており、特に蘇我馬子からの信任が厚かったことが特徴です。

経歴と新羅出征

境部雄摩侶に関する記録は『日本書紀』に残されています。推古天皇31年（623年）7月、新羅との関係が緊張を生じさせるような出来事が発生しました。天皇は大臣である蘇我馬子とともに、国政を議論しながら慎重に対応する方針を取りました。しかし、慎重派の田中臣と対照的に好戦的な見解を持つ中臣連国との間で意見が対立しました。最終的に、慎重派の主張が優先され、吉士磐金と吉士倉下が新羅に派遣されることとなりました。

この様子が展開されている最中、境部雄摩侶は中臣国と共に征新羅大将軍に任命され、多数の軍を指揮して新羅に攻撃を仕掛けました。興味深いことに、彼が出征した際には、磐金と倉下が新羅との交渉を進めていたため、双方の意図が交錯していました。結果的に、戦争は日本側に有利に進展し、新羅の王は降伏を余儀なくされます。

この戦いに関して、学者の直木孝次郎は、新羅が日本国内の積極的な出征派と和平を求める派を分断させ、自国に有利な結果を導こうとしたとの見解を示しています。この動きが、『まいない』の時期に関わる混乱とも結びつくとされています。

新羅の降伏とその後

境部雄摩侶はこの新羅遠征で成功を収め、五つの城を奪取。また、降伏後には旧任那地域の六つの城を新羅から譲り受けることを約束させました。将軍としての彼の声明は「新羅は罪を知って服属した。しいてこれを撃とうとするのはよくはあるまい」とされており、この姿勢が後に収賄の疑惑を生むこととなります。この一連の出来事は、彼や他の将軍たちが新羅からの不当利益を得たのではないかという広まりつつある噂の背景となっています。

その後、日本側の軍が新羅から撤退した後も、新羅は任那地域の侵略を続けました。つまり、雄摩侶は一時的な勝利を収めながらも、全面的な平和確立には至らなかったわけです。

歴史的背景とその影響

境部雄摩侶の生涯において、聖徳太子や蘇我馬子の死去は大和政権内部の権力闘争をさらに激化させました。特に推古天皇が崩御した後の彼の行動については記録が乏しく、摩理勢が蘇我蝦夷に暗殺された際にどのような立場を取っていたのかは不明です。

境部雄摩侶の影響力は彼の出征によって大きく、しかしその後の政治情勢との絡みで少しずつ変化していきました。このように彼の活躍は、飛鳥時代の政治と軍事の歴史に深く刻まれています。

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