増田屋コーポレーション

株式会社増田屋コーポレーション

株式会社増田屋コーポレーションは、江戸時代中期の享保9年（1724年）に創業した、東京都台東区蔵前に本社を置く日本の老舗玩具メーカーです。およそ300年に及ぶ長い歴史を有し、日本の玩具産業の重要な一角を担ってきました。

創業から現代へ

創業者は、春日局の末裔を称したとされる齋藤林兵衛氏です。創業時は人形を専門に扱っていましたが、明治維新を機に貿易部を設立。欧米をはじめとする世界各国の玩具を積極的に輸入し、日本の市場に紹介するなど、早くから国際的な視点を持っていました。これは、当時の日本企業としては非常に先見の明がある取り組みでした。

近代史の大きな出来事とも深く関わっています。1923年の関東大震災発生後には迅速に業務を再開しましたが、第二次世界大戦中の戦時体制下では、他の多くの企業と同様に活動が制限され、休業や疎開を余儀なくされる困難な時期も経験しました。戦後、同社は輸出貢献企業として復興を支え、玩具メーカーとしての長い歴史を現代に繋げています。

マスダヤコレクション

残念ながら、戦火によって創業以来の貴重な玩具の多くは焼失してしまいました。しかし、増田屋コーポレーションは、自社で製造したブリキ玩具や、過去に販売を手掛けた世界各国の玩具を体系的に収集・保管しており、これを「マスダヤコレクション」と呼んでいます。このコレクションは、日本の玩具史を知る上で非常に貴重なものであり、国内有数の優れた玩具コレクションとして評価されています。かつては岡山県のおもちゃ王国や香川県のレオマワールド、近年では2013年から2014年にかけて開催された「VINTAGE TOYS展」など、様々な場で一般に公開された実績があります。

画期的な製品と技術革新

増田屋コーポレーションは、伝統的な老舗でありながらも、常に革新的な製品を生み出してきました。特に、1940年代から1960年代に製造されたブリキ製のロボットや自動車などは、その精巧な作りとユニークなデザインで、今日でも国内外のコレクターから高い人気を得ており、オークションで高値がつくことも珍しくありません。

また、同社は遠隔操作玩具の分野において、世界的に見ても早期から開発を手掛けたパイオニアです。まだ真空管やトランジスタが普及していなかった1955年に、「増田屋斎藤貿易」として発売したラジコンバスは、初期の無線通信技術である火花送信機とコヒーラ検波器を玩具に応用した画期的な製品でした。これは、高価な電子部品に頼らずに無線操縦を実現した点で革新的であり、後の電子玩具やラジコン技術の発展に大きな影響を与えたと言えます。ちなみに、ホビー用の無線操縦玩具を指す一般的な呼称となっている「ラジコン（ラジオコントロール）」という言葉は、同社が商標権を保有しています。ラジコン以外にも、笛の音などの特定の音を使って操作する「ソニコン」なども開発しており、様々な方式による遠隔操縦玩具で先駆的な役割を果たしました。これらの画期的な玩具は、画家の山下清氏のちぎり絵作品のモチーフにもなったことでも知られています。

多様な製品と長く愛されるものづくり

遠隔操作玩具に加え、増田屋コーポレーションは非常に幅広いジャンルの玩具を手掛けています。1968年には、おもちゃコンクールでダイヤモンド賞を受賞した人気商品「デコちゃんポッポ」を発売。1970年代には、様々なキャラクターのトーキングソフビ人形シリーズで人気を博しました。1980年代初頭には、当時のトレンドであったLCD（液晶）ゲーム機市場にも参入するなど、常に時代のニーズに応える製品開発を行っています。

近年では、アクアリウムや家庭の浴槽でも手軽に遊べる小型のラジオコントロール潜水艦を開発・販売するなど、現代的な遊び方に対応したユニークな製品も生み出しています。他にも、知育玩具、パーティーグッズ、人形、パズル、電子ゲーム、電動乗用玩具など、その製品ラインナップは非常に多岐にわたります。海外の良い玩具を日本に紹介する役割も果たしており、1975年にはオーストリアで生まれた「モーラー」を導入し、日本で社会現象となるほどの大ブームを巻き起こしました。

増田屋コーポレーションの製品には、一過性の流行に流されず、子供たちが長く楽しめる、世代を超えて親しまれる製品を大切にする姿勢が根底にあります。その象徴的な例が、高度経済成長期の初期から現在まで半世紀以上にわたって販売が続けられているロングセラー、「電動動物『楽しい仲間』」シリーズです。電池で動き、リズムに合わせて可愛らしい動作をするこの幼児向けぬいぐるみ玩具は、マイナーチェンジを重ねながら今なお多くの子供たちに愛されており、宮内庁公開の写真に愛子内親王殿下のお気に入りとして写っていたことでも知られています。

まとめ

江戸時代から続く長い歴史を持ちながらも、ブリキ玩具や世界初の玩具ラジコンといった革新的な製品を生み出し、常に新しい技術やアイデアを玩具に取り入れてきた増田屋コーポレーション。その多様な製品群は、子供たちの遊びを豊かにし、世代を超えて多くの人々に喜びを与え続けています。日本の玩具文化史において、伝統と革新を融合させた重要な役割を担う企業と言えるでしょう。

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