墟市

墟市（きょし）の歴史と発展

墟市、または草市（そうし）とは、晩唐以降の中国で市場形成の一環として現れた小規模な定期市を指します。特に江南地域では「墟市」と呼ばれることが多く、他地域でも様々な名称が使われていました。これらの定期市は、人口が密集する地域や交通の要所に自然発生的に生じ、人々の生活向上に寄与してきました。

律令制下の中国では、国家による厳しい商業規制が存在しました。国家が認めた区画外での商業活動は控えられており、商業に対しては抑圧的でした。しかし、晩唐期には国内の秩序が乱れ、律令制が機能しなくなり、その結果として人口の集まる地域では徐々に商業活動が活発化していきました。このようにして、墟市が誕生したのです。

墟市は通常、月に何回かの開催が行われるもので、開催日以外は人がほとんどいない廃墟のような状態になることもありました。ただし、開催頻度の短縮や、恒常的に営業される市場ができることで、次第に小規模な都市へと発展する例も見られました。

この状況に注目した有力な地主や商人たちは墟市の環境整備を行い、地代を得ようとしました。そのためには、墟市の安全を確保することが求められ、国家や地方権力によって墟市を支配するための鎮が設けられることもありました。逆に、取引の安全を確保するために、鎮そのものに市場が形成されることもあり、これらは「鎮市（ちんし）」として知られています。さらに、有名な寺院の周囲では廟市（びょうし）が開かれることがあり、廟市は生活必需品ではなく、遠方からの商人による貿易の拠点となることが多かったのです。

北宋以降は、中央権力が地方の墟市の管理強化に取り組み、商税を徴収しました。また、鎮を行政区に改編したり、墟市の設置場所を県や鎮に昇格させる動きが進みました。この際、地元の有力者である長老たちも権力と結びつくことを期待し、新たな市場支配の動きに支持を示しました。このように、国家の商業に対する介入が強まる中で、中国都市の発展は政治的に定められるようになりました。

中国の商業は時代と共に盛んになりましたが、近代に入るまでこの基本的な状況は変わることはありませんでした。墟市は、単なる商品流通の場であると同時に、当時の社会や経済の変遷を映し出す重要な舞台でもあったのです。

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