夏の夜の夢 (ブリテン)

概要

ベンジャミン・ブリテンのオペラ『夏の夜の夢』は、ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲を原作とする3幕構成の作品です。ブリテン自身とピーター・ピアーズが共同で台本を作成し、原作の台詞を約半分使用しています。このオペラは、1960年にオールドバラ音楽祭のジュビリー・ホールの再建を記念して初演されました。

ブリテンは、1959年8月から作曲を開始し、翌1960年4月に全曲を完成させました。初演は1960年6月11日にブリテン自身の指揮によって行われ、ピーター・ピアーズ、アルフレッド・デラーらが参加しました。その後、コヴェント・ガーデン、ハンブルク、ベルリン、東京など各地で上演されています。日本初演は1962年5月31日に東京二期会によって行われました。

『夏の夜の夢』は、「夢」の世界における心理構成の探求をテーマとしています。ブリテンは、「夢」や「眠り」に強い関心を持っており、この作品の後にも『ノクターン』や『ノクターナル』といった作品で同じテーマを用いています。音楽的には、和声、動機、音色などの手法を駆使し、幻想的な雰囲気を創り出しています。

登場人物

妖精王オベロン
妖精の女王タイタニア
妖精パック
恋人たち：ライサンダー、ハーミア、デメトリウス、ヘレナ
職人たち：ボトム（織工）、クインス（大工）、スナッグ（指物師）、フルート（鞴修理工）、スナウト（鍋修理工）、スターヴリング（仕立屋）
シーシュース大公
ヒポリタ（シーシュースの婚約者）
その他、妖精の合唱

楽器編成

木管楽器: ピッコロ2、フルート2、オーボエ1、コーラングレ1、クラリネット2、ファゴット1
金管楽器: ホルン2、トランペット、トロンボーン
打楽器: ティンパニ、トライアングル、シンバル、タンバリン、タムタム、ウッドブロック2、シロフォン、タンブロ、小太鼓、テナードラム、大太鼓、ベル2（奏者2名）
弦五部
* その他: リコーダー2、ハープ2、チェンバロ（またはチェレスタ）、小シンバル

演奏時間

約2時間24分（第1幕:約47分、第2幕:約48分、第3幕:約49分）

あらすじ

舞台はアテネ近郊の森とシーシュース大公の宮殿です。

第1幕

妖精王オベロンと女王タイタニアは、インドの小姓を巡って夫婦喧嘩をしています。オベロンは妖精パックに「浮気草」を持ってこさせ、タイタニアのまぶたにその汁を塗ります。また、恋人たちの騒動を知り、デメトリウスにも薬を塗るようにパックに命じます。一方、職人たちはシーシュース大公の結婚式で上演する劇の稽古を始めます。恋人たちのすれ違いと、妖精たちのいたずらが入り乱れる中で、タイタニアがロバ頭に変身したボトムに恋をするなど、混乱が深まっていきます。

第2幕

職人たちの劇の練習中、ボトムがロバの頭に変えられてしまいます。目覚めたタイタニアはロバ頭のボトムに恋をし、オベロンは満足します。しかし、パックの勘違いによって、恋人たちの関係はさらに複雑に。ライサンダーとデメトリウスはヘレナを巡って決闘寸前になります。オベロンはパックに事態の収拾を命じ、夜霧と声色を使って4人を眠らせ、ライサンダーのまぶたに再び薬を塗ります。

第3幕

オベロンはタイタニアの魔法を解き、和解します。目覚めた恋人たちは、正常な関係に戻り、ボトムも元の頭に戻ります。シーシュース大公の宮殿では、恋人たちの結婚式と職人たちの劇が催され、妖精たちは3組の男女を祝福します。最後にパックが観客に挨拶し、幕が閉じます。

録音

ブリテン自身の指揮による1966年の録音の他、コリン・デイヴィスやリチャード・ヒコックスの指揮による録音が存在します。

このオペラは、シェイクスピアの戯曲の魅力を損なうことなく、ブリテンならではの音楽で幻想的な世界を創り出しています。登場人物たちの感情や物語の展開を、巧みに表現した傑作です。

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