夏の憂鬱

L'Arc〜en〜Ciel 「夏の憂鬱 [time to say good-bye]」

1995年10月21日にリリースされたL'Arc〜en〜Cielの3枚目のシングル「夏の憂鬱 [time to say good-bye]」は、前作「Vivid Colors」から約3ヶ月ぶりのリリースとなりました。この楽曲は、同年9月1日に発売された3rdアルバム『heavenly』に収録されていた「夏の憂鬱」をリアレンジしたもので、リカットシングルとしては「Blurry Eyes」以来、約1年ぶりのリリースとなります。

楽曲概要

「夏の憂鬱 [time to say good-bye]」は、原曲である「夏の憂鬱」を大幅にリアレンジしたバージョンです。tetsuyaは、アルバム発売前からシングルカットの話があり、スタッフからの評判も良かった「夏の憂鬱」を、シングルとして独立させるためにアレンジを施したと語っています。リアレンジでは、前作「Vivid Colors」でも共同編曲を務めた西平彰をアレンジャーに迎え、原曲のフォークロック的な要素を、1980年代のニューミュージックを彷彿とさせる煌びやかなサウンドへと進化させました。具体的には、イントロを歌メロから開始する構成に変更し、Cメロの尺を伸ばす、歌詞を追加するなどの変更が加えられています。

hydeは、リアレンジのアイデアはアルバム制作時からあったものの、アルバム収録版で楽曲の雰囲気は表現できていたため、シングル化にあたりそのアイデアを活かしたと述べています。

音楽ライターの川口瑞夫は、この曲を「堀江淳の『メモリーグラス』を連想した」と評し、BOØWYやレベッカ、ビーイング系以前のポップ感覚を持っていると分析しています。また、カップリング曲の「あなたのために」については、ホルガー・シュカイのようなコラージュ音に興味を惹かれたと述べています。

カップリング曲「あなたのために」

カップリングには、新曲「あなたのために」が収録されています。この曲は、インディーズ時代からライブで披露されていた楽曲が原曲となっています。この楽曲も表題曲同様に、西平彰がリアレンジを手掛けています。

リリースとプロモーション

リリースプロモーションとして、1995年12月23日から25日にかけて、としまえんとのタイアップイベント「L'Arc〜en〜Ciel DAY Noël 1995」が開催されました。このイベントでは、本作のジャケットを持参すると入場料が無料になる特典や、メモリアルカードのプレゼント、スペシャルビデオの上映、ラジオ番組の公開録音などが行われました。

本作は、通常盤CDの1形態でリリースされました。当時は8cmシングルとして発売されましたが、2006年の再発企画で12cmシングルとして再リリースされています。

ミュージックビデオ

「夏の憂鬱 [time to say good-bye]」のミュージックビデオは、フォトグラファーのデイビッド・ステットソンが監督を務めました。撮影には、写真家の緒車寿一が参加しており、これがL'Arc〜en〜Cielとの出会いとなりました。このミュージックビデオは、ベストアルバム『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1998-2000』の初回限定盤DVDやクリップ集『CHRONICLE 0 -ZERO-』に収録されています。また、2022年4月からは公式YouTubeチャンネルで無料公開されています。

楽曲解説

夏の憂鬱 [time to say good-bye]

哀愁漂うメロディラインが特徴的な楽曲です。原曲は、kenがアコースティックギターを弾いていた際に生まれたイメージを基に制作されました。kenは、東京ベイNKホール周辺のトロピカルな風景や夕焼け、海などをイメージしたと語っています。また、hydeは、kenから山口百恵の「いい日旅立ち」のような雰囲気にしたいという話があったと述べています。そのため、アルバム収録版では1970〜80年代のフォークロックを意識したアレンジが施されていました。

シングルバージョンでは、西平彰を迎え、ニューミュージックの雰囲気を取り入れたアレンジに大きく変更。イントロの変更やCメロの追加、ギターのカッティングの変更など、構成面でも手が加えられています。

歌詞は、「いい日旅立ち」を意識し、午後3時頃の風の強い砂浜をイメージして書かれました。hydeは、kenからタイトルを繰り返すような歌詞にしてほしいというリクエストがあったと述べています。また、リアレンジにあたり、楽曲を聴いた時に自然に出てきたフレーズを歌詞に追加しています。

このシングルバージョンは、ベストアルバム『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1994-1998』で初めてアルバムに収録されました。また、ライブでは長らく演奏されていませんでしたが、2006年の結成15周年ライブで約10年ぶりに披露され、その後、定期的にセットリストに組み込まれるようになりました。

2007年には、P'UNK〜EN〜CIELとしてセルフカバーされ、「夏の憂鬱 [SEA IN BLOOD 2007]」としてシングル「DAYBREAK'S BELL」に収録されました。このセルフカバーでは、80年代スラッシュメタルの要素を取り入れ、原曲とは大きく異なるメタルアレンジが施されています。

あなたのために

異国情緒のあるコーラスが印象的なメロディアスなナンバーです。この曲の原型は、kenがL'Arc〜en〜Ciel加入前に制作したもので、インディーズ時代からライブで披露されていました。当初は「Too...」や「Too glare」という曲名で演奏されていましたが、音源化されることはありませんでした。

本作に収録するにあたり、歌のメロディが付け直され、タイトルも変更されました。hydeは、メロディを一度白紙にして付け直したと述べています。また、コーラスには山根麻衣が参加しており、楽曲に独特の雰囲気を加えています。

この楽曲は、kenがライブで演奏するために持ってきた際に「Murder」というタイトルが付けられていましたが、hydeが聞き間違えたことから「Mother」に変更されたというエピソードがあります。その後、さらに曲名が変更され、現在の「あなたのために」に至ります。

タイアップ

夏の憂鬱 [time to say good-bye]
TBS系番組『M-Navi』エンディングテーマ

参加ミュージシャン

hyde：Vocal
ken：Guitar
tetsu：Bass
sakura：Drums & Percussion
西平彰：Keyboards（夏の憂鬱 [time to say good-bye]）

収録アルバム

オリジナルアルバム
『heavenly』 (#1,原曲）
ベストアルバム
『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1994-1998』 (#1)
『The Best of L'Arc〜en〜Ciel c/w』 (#2)
『TWENITY 1991-1996』 (#1)

参考文献

『GiGS』、シンコー・ミュージック、1995年9月号
『ロッキンf』、立東社、1995年9月号付録
『ロッキンf』、立東社、1995年11月号
『L'Arc〜en〜Ciel is』、シンコー・ミュージック、1996年
『別冊宝島539 音楽誌が書かないＪポップ批評9』、宝島社、2000年
『WORDSⅡ L'Arc〜en〜Ciel』、角川マガジンズ、2010年、著者:鹿野淳
『ギター・マガジン』、リットーミュージック、2012年3月号
* 『Rolling Stone Japan L'Arc-en-Ciel 30th L'Anniversary Special Collectors Edition』、CCCミュージックラボ、2021年

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