外城制(とじょうせい)とは
外城制とは、江戸時代の
薩摩藩(鹿児島藩)において実施された、独特の地方支配制度です。
1784年(
天明4年)に「郷」と名称が改められる以前は、この拠点は「外城」と呼ばれていました。この制度は、
薩摩藩における
武士の配置と、領内支配のあり方を特徴づける重要な要素でした。
歴史的背景
薩摩藩は、
1871年(
明治4年)の時点で人口の26%が
武士という、他藩と比較して非常に多くの
武士を抱えていました。このため、藩は領内をいくつかの区域に分割し、各区域の拠点に
武士を定住させることで、
武士の分散と軍事ネットワークの構築を図りました。また、これらの拠点は農山漁
村や町場を支配するための拠点としての役割も担っていました。
これらの拠点は、藩主の
居城である内城(
鹿児島城)に対して「外城」と呼ばれました。外城制は、戦国時代の
島津氏における
地頭・衆中制が変質したものであり、各外城には半農半士の
武士団が駐屯・居住し、有事の際には領主や
地頭の命令で戦闘員として活動しました。戦国時代末期から織豊時代にかけて、外城は区域内の複数の城砦を拠点とする形態から、中心的な城砦の麓に形成された「麓集落」に集住する形態へと変化しました。
外城の構造と機能
一つの外城は、数ヶ
村を区域として構成されていました。外城の中心には、城砦や農山漁
村の主要部、交通の要衝などに設置された
地頭仮屋があり、その周辺には
武士たちが住む麓集落が広がっていました。外城に居住する
武士は「外城士」と呼ばれ、
鹿児島城下に住む
武士(城下士)とは区別されました。
外城の行政は、
地頭の居館である
地頭仮屋で行われていましたが、
寛永期以降、
地頭は
鹿児島城下に定住するようになり、外城の軍事的役割は徐々に薄れていきました。その後、上級
郷士(噯、組頭、横目)が実質的な支配を担うようになりました。
近代以降の影響
1878年(
明治11年)に制定された郡区町
村編制法に基づき設置された
戸長役場においても、行政区域は多くの場合、外城(郷)を単位としていました。
1889年(
明治22年)の町
村制施行時にも、外城(郷)の区域はほぼそのまま
村として引き継がれました。小規模な郷は、1950年代の昭和の大合併で、大規模な郷も21世紀初頭の平成の大合併で、その多くが合併を経験しましたが、
枕崎市や長島町など、行政区域が郷とほぼ一致する自治体も現存しています。
外城の一覧
以下に、
廃藩置県が行われた
1871年(
明治4年)の時点で存在した外城(郷)の一部を列記します。
大隅国
日向国
廃止された外城
伊佐智佐(谿山郡、山田郷と合併し谷山郷)
山田(谿山郡、伊佐智佐郷と合併し谷山郷)
久志(河辺郡、
1657年頃に秋目郷と合併し久志秋目郷となる)
秋目(河辺郡、1657年頃に久志郷と合併し久志秋目郷となる)
山田(薩摩郡、
明治2年百次郷と合併し永利郷)
百次(薩摩郡、明治2年山田郷と合併し永利郷)
中郷(薩摩郡、
明治3年東郷に編入)
まとめ
外城制は、
薩摩藩独自の地方支配制度であり、
武士の分散配置と軍事・行政拠点としての役割を担っていました。また、外城の存在は、近代以降の行政区画にも大きな影響を与えました。この制度は、
薩摩藩の歴史を理解する上で欠かせない要素です。
参考文献
鹿児島県総務部参事室編『鹿児島県市町村変遷史』 鹿児島県、1967年。
坊津町郷土誌編纂委員会『坊津町郷土誌 上巻』坊津町郷土誌編纂委員会、1969年。
関連項目
一国一城令
門割