外灘

外灘（ワイタン）とは

外灘（ワイタン、拼音: Wàitān、英語名：The Bund）は、中国・上海市の中心部、黄浦区に位置する、上海を代表する観光エリアです。黄浦江西岸に沿って約1.1km続く中山東一路沿いの地域を指します。この一帯は、19世紀後半から20世紀前半にかけての租界時代に形成され、当時建設された西洋式の高層建築が数多く残っています。

名称の由来

黄浦江の西岸は、古くは「黄浦灘」と呼ばれていました。「灘」とは中国語で河岸を意味します。上海では、河川の上流を「裏」、下流を「外」と呼ぶ習慣があり、かつて上海県市街地付近にあった小川「上海浦」を境に、上流側を「裏黄浦灘」、下流側を「外黄浦灘」と区別しました。それぞれの略称が「裏灘」、「外灘」となり、現在に至っています。

英語名の「ザ・バンド」（The Bund）は、築堤や埠頭を意味する「Bund」に由来します。この「Bund」は、元々インドで築堤を指す言葉（ウルドゥー語：band）であり、16世紀初頭に英語に取り入れられました。ペルシャ語を語源とし、人工の堰を意味する言葉で、インド各地で広く使用されていました。大英帝国植民地時代の各地に「バンド」と呼ばれる堤防や埠頭が存在しますが、固有名詞として「ザ・バンド」と言う場合は、一般的に上海の外灘を指します。

歴史

外灘は、上海の旧市街（上海県城）の北側に位置し、当初はイギリス租界として発展しました。1854年には、イギリスとアメリカの租界が統合され、共同租界となりました。19世紀末から20世紀初頭にかけて、外灘は東アジアの金融の中心地として急成長し、多くの西洋式建築物が建設されました。これらの建物は、イギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、日本、オランダ、ベルギーなど、各国の銀行や領事館、新聞社、社交クラブなどとして利用されました。

1940年代までには、中華民国で活動していた主要な銀行が外灘に本店を置いていました。しかし、国共内戦の結果、共産党が勝利すると、金融機関は次第に外灘から移転し、ホテルやクラブも閉鎖され、他の用途に転用されました。また、植民地時代を象徴するような銅像や外国人像も撤去されました。

1970年代末から1980年代初頭にかけて、中国が市場経済を導入する中で、外灘の建築物は徐々に元の用途を取り戻し始めました。行政機関が移転し、その跡地にホテルや金融機関が再び営業を開始しました。この時期には、台風による洪水も何度か発生したため、地方政府は堤防を嵩上げし、現在の姿である道路より10m高い堤防が築かれました。1990年代には、中山路が拡幅され、最大10車線にまで広がりましたが、かつて道路沿いにあった公園用地の多くが失われました。

1990年代、上海市政府は外灘の範囲を拡大し、南側を「新バンド」、北側を「北バンド」と呼ぶようにしました。これは、「植民地主義の残滓」という社会主義イデオロギーとの関係を調整し、外灘周辺の観光的な価値と地価を向上させることを目的としていました。しかし、これらの名称は観光ガイドなどではあまり使われていません。

2008年以降、外灘一帯の交通再編が進められ、かつてバンドと延安路の合流点にあった高架道路が解体されたほか、外白渡橋の移転と復元工事が行われました。現在は、道路の立体化により、かつて存在した公園用地を復元する計画が進められています。

景観

外灘の伝統的な範囲は、南は延安路から北は呉淞江（蘇州河）に架かる外白渡橋までのエリアです。中心となるのは黄浦江沿いの中山路で、この道路の西側には、外灘の景観を特徴づける52棟の西洋建築が立ち並んでいます。東側にはかつて公園（黄浦公園）がありましたが、道路拡幅により大部分が失われています。さらに東側は堤防となっています。

かつては多くの銅像が外灘にありましたが、現在残っているのは、南京路との交差点にある陳毅（初代上海市長）の銅像のみです。外灘の北端に近い黄浦公園には、アヘン戦争以降の上海での革命闘争で亡くなった人々を記念する人民英雄記念碑が建立されています。

主な建物

外灘の建物は、正式名称の他に、住所から「外灘3号」や「外灘10号」といった通称で呼ばれることもあります。各建物は、歴史的な背景を持ちながら、現在ではレストラン、バー、ショップなど、様々な用途で利用されています。

外灘は、その歴史的な建築物と美しい景観、そして活気ある雰囲気により、上海を訪れる観光客にとって欠かせない場所となっています。

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