外記日記

外記日記（げきにっき）

外記日記とは、古代日本の朝廷における官衙、外記局によって作成された記録・日記のことです。外記局は、国史の編纂や朝廷の政務・儀式を遂行する上で重要な役割を担っており、その活動の記録である外記日記は、朝廷の公的な日記として、奈良時代末期から平安時代後期にかけて作成されました。

成立の背景

律令制度下において、朝廷では多くの公文書が作成・施行され、各官庁では後日のために記録が保管・整理されていました。外記局もその一つであり、記録の作成は重要な業務でした。9世紀初頭には、外記局が中務省の内記とともに内裏の儀式を記録するよう命じられた事例があり、これが外記日記の初期の形態と考えられています。9世紀以降、内裏内部の儀式や政務が重要視されるにつれて記録量が増加し、外記局の記録作成業務も拡大していきました。

歴史と利用

外記日記は、主に奈良時代末から平安時代にかけて書かれ、官庫に保管されました。弘仁6年（815年）には、宣旨によって公日記としての権威を与えられ、以降、外記は朝廷の節会や臨時行事の内容を記録し、後日の参照に備えました。仁和2年（886年）には、朝廷の人事記録が外記局に命じられるなど、記録と保管は外記局の重要な任務となっていきます。公日記として書き継がれ、他の公日記よりも重要視されるようになりました。現在、原文が残されていることは稀ですが、逸文が広橋本『東宮元服記』中巻などに含まれています。

外記日記には、日々の記録である日次記の他に、行幸や大祓といった特定の事項に即して書かれた別記がありました。行事の際には、蔵人が記した殿上日記と共に内容が記録されました。公日記であるため、年月を隔てても記録の内容や字句が類似していることが特徴です。

また、『続日本紀』以下の官撰国史の編修にも利用され、鳥羽法皇の命により信西（藤原通憲）が編纂した『本朝世紀』は、特に外記日記を参考にして編まれたとされています。

衰退と廃絶

政務の公的記録として、当初は外記局から門外不出でしたが、10世紀には早くも流出が確認されます。その原因としては、平安時代の貴族社会で外記日記が重要視されるようになり、公卿らが書写のために持ち出したことなどが考えられます。10世紀末からは、外記局の文書保管機能も低下し始め、治暦2年（1066年）には、図書寮の紙工らによって約二百巻が盗み出されるという事件も発生しました。記録を行っていたのは、外記の下にいた史生でしたが、彼らへの給与が滞ったことで書写も行われなくなりました。その後、11世紀末には公日記としての外記日記は廃絶したとされています。かつては私日記の興隆が公日記としての必要性を低下させたとされていましたが、私日記の存在が外記日記の意義を低下せしめたのか、公日記の衰退により私日記が作成されるようになったのかについては、見解が分かれています。

私日記としての外記の日記

『外記日記』と題する記録の中には、外記の私日記や家記として分類されるものもあります。これらは外記局で保管されていた従来の公的な外記日記とは異なり、子孫への相伝がなされていたことが特徴です。このような私的な日記は10世紀後半から始まり、11世紀には大外記の日記の存在が確認されるようになり、12世紀以降は大外記以外の外記も日記を書いていったとされています。鎌倉時代中期の『外記日記　新抄』、16世紀の清原業賢筆『享禄二年外記日記』、『大外記中原師廉記』など、外記個人の日記は各時期の朝廷や下級役人の実態を知る上で貴重な史料となっています。

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