図書寮

図書寮：律令制と明治期の国家機関

律令制下の日本において、図書寮は中務省に属する重要な機関でした。その役割は、現代の国立図書館に相当する国家蔵書の管理です。経典や仏像なども管理下に置かれ、写本作成や製本を行う職員も所属していました。さらに、『養老令』には撰史（歴史書の編纂）も職掌の一つとして記載されていますが、実際には撰史事業は、その時々の必要に応じて組織された別組織で行われていました。これは、撰史に必要な資料が内記や外記によって管理されていたことなどが原因として考えられます。平安時代には、御書所などの機関に実権を奪われ、図書寮の権限は衰えていきました。

図書寮のもう一つの重要な職掌は、紙、墨、筆といった文房具の製造でした。これは、時代が下るにつれて図書寮の中心的業務となっていきました。江戸時代には、徳川幕府の正史『御実紀』（通称『徳川実紀』）の編集に関わった成島司直が図書寮の図書頭に任じられた記録が残っています。

紙屋院：図書寮の付属機関

紙屋院は図書寮の付属機関で、紙の製造を専門に行っていました。特に9世紀頃には優れた設備を整え、高品質の紙「紙屋紙」を生産していました。紙の製造は、品部（古代日本の官人制度における職種）の紙戸が担当していました。

図書寮の職員

図書寮には、様々な職種の職員がいました。

幹部: 頭（従五位上相当）、助（正六位下相当）、大允（正七位下相当）、少允（従七位下相当）、大属（従八位上相当）、少属（従八位下相当）など、官位に応じた役職がありました。
実務担当者: 使部、直丁といった一般職員に加え、写本作成の写書手、製本の装潢手、紙、墨、筆の製造を行う職人などもいました。

明治時代の宮内省図書寮

明治時代には、宮内省に図書寮が設置されました。図書頭を長とし、皇統譜や実録などの編纂・管理、皇室典範などの重要な法令の正本や貴重な宮中保管書籍の管理などを主な業務としていました。昭和24年（1949年）、宮内省図書寮は諸陵寮と統合され、宮内庁書陵部となりました。

図書寮の変遷：国家機関としての役割と影響

図書寮は、律令制から明治時代にかけて、国家機関として重要な役割を果たしてきました。その職掌は、時代の変化とともに変化しましたが、常に国家の貴重な文献や資料の管理、そして文房具の製造という、文化を支える重要な役割を担っていました。特に、撰史事業に関わった側面は、日本の歴史記録の保存と編纂に貢献したと言えるでしょう。平安時代以降、権限の低下や他の機関との関係性など、複雑な歴史的経緯を辿っていますが、その存在は日本の文化的・歴史的遺産の継承に大きく貢献したと言えるでしょう。また、紙屋院のような付属機関の存在も、図書寮の活動を支える上で重要な役割を果たしていました。宮内省図書寮へと引き継がれた役割は、現代の宮内庁書陵部に受け継がれ、日本の歴史と文化の保存に貢献し続けています。

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