外記

外記：律令制下の朝廷組織と重要な役割

外記は、古代日本の律令制において、朝廷の最高機関である太政官に属した重要な職務でした。その歴史と役割、組織構成について詳細に見ていきましょう。

外記の職掌と権限

外記は、少納言の指揮下で、主に以下の業務を担っていました。

詔勅の校勘と奏文の作成: 中務省内記が作成した詔勅（天皇の命令）の校正を行い、太政官から天皇への奏文を作成しました。正確性と形式が求められる重要な仕事です。
朝廷儀式・公事の奉行: 太政官上卿の指示に従い、朝廷の儀式や公的な行事を円滑に遂行するための準備や運営に携わりました。関係先例を調査・報告し、問題解決に尽力しました。
人事案件への関与: 人事に関する手続きの一部も担い、朝廷運営に幅広く貢献していました。
御所記録の分担: 弘仁6年（815年）からは、天皇の日々の動静を記録する御所記録の業務も分担するようになりました。
少納言権限の移譲: 平安時代中期以降、蔵人の設置により少納言の権限が弱まると、その一部が外記に移譲されました。

これらの多様な職務をこなすため、外記の地位は徐々に上昇していきました。平安時代中期には五位に昇進する大外記（大夫外記）も現れ、その筆頭は局務と呼ばれました。さらに、人員増加のため権官である権少外記も設置されました。

組織構成と昇進

平安時代中期から末期にかけての外記局は、大外記2名（うち1名が五位の大夫外記）、少外記2名、権少外記1名の計5名で構成されていました。外記は、正月の叙位で叙爵枠が設けられ、毎年、在職年数の長い者が従五位下に叙せられました。六位の外記は4名であるため、権少外記は少外記を経て大外記に昇進し、4年間の在職を経て叙爵されるのが一般的でした。五位に叙された外記は、受領に任じられる資格を得ました。

文治3年（1187年）には、外記の定員が最大6名に増員されました。

世襲化と権限の変遷

当初は、儒学や文筆に優れた下級官人が任命され、昇進の足がかりとされていました。しかし、鎌倉時代以降は、舟橋家（清原氏嫡流）と押小路家（中原氏）といった特定の家系が世襲するようになりました。室町時代には、舟橋家が天皇の侍読として外記を経ずに少納言に昇進するようになると、外記局務は押小路家のみの世襲となり、局務家と呼ばれるようになりました。江戸時代には、押小路家は、史生だけでなく各省の地下官人を動員して朝廷の儀式・公事を執り行い、その権限を拡大しました。これらの地下官人を外記方と呼び、60家以上あったと言われています。

外記局と外記日記

外記は、当初少納言局に属していましたが、やがて外記庁、さらに外記局という独自の事務所を持つようになりました。外記庁は内裏の建春門東側に位置し、文殿などが併設されていました。太政官会議も、時代が下ると外記庁で行われるようになり、外記政と呼ばれました。外記は職務日記である外記日記を作成していましたが、平安時代後期には律令制の弛緩や外記日記の私的利用により、外記の世襲化が進み、公的権威は衰えました。藤原頼長が外記日記の励行を命じたこともありましたが、成功には至りませんでした。

外記の職員構成

外記局の職員は、以下の通りでした。

大外記：2名（正七位上、のち正六位上相当）
少外記：2名（従七位上、のち正七位上相当）
史生：10名
召使：2名
使部：43名

まとめ

外記は、古代日本の朝廷運営に不可欠な役割を担っていました。その職務内容や組織構成は時代とともに変遷し、世襲化や権限の拡大・縮小といった複雑な歴史を辿りました。外記日記の存在も、その歴史を理解する上で重要な要素です。

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