多久龍三郎

多久龍三郎は、1901年（明治34年）に東京で生まれ、1983年（昭和58年）に生涯を閉じました。彼は、大正から昭和という激動の時代を、実業家、政治家、そして華族という多様な顔を持ちながら生き抜いた人物です。

多久龍三郎は、多久鍋島家（後多久氏）の13代当主であり、男爵の爵位を継承しました。彼の家系は、佐賀藩の重臣であった多久氏に由来し、その歴史と伝統を受け継いでいます。彼は、12代当主である父・多久乾一郎の三男として生まれ、幼少期を佐賀で過ごした後、東京で教育を受けました。学習院では昭和天皇の御学友となり、東京帝国大学では文学部国史学科と経済学部を修了するという、優れた学歴を誇ります。また、欧米への留学経験も持ち、国際的な視野を養いました。

実業家としては、織田信託の監査役、社長、織田興業の社長、東西貿易の取締役など、多くの企業の要職を歴任しました。彼の経営手腕は、当時の経済界で高く評価されていたと考えられます。また、政治家としては、1944年（昭和19年）に貴族院男爵議員に当選し、公正会に所属して活動しました。しかし、貴族院は1947年（昭和22年）に廃止され、その役割を終えました。その後、佐賀県知事選に立候補しましたが、惜しくも次点で落選しています。

政治の舞台から退いた後は、地域社会への貢献に尽力しました。佐賀県小城郡多久村長、佐賀県教育会長を歴任し、地方自治の発展と教育の向上に貢献しました。これらの役職を通して、彼は地域住民からの信頼も厚かったことが伺えます。

多久龍三郎の親族についても触れておきましょう。母は伊丹重賢の五女である千枝子、妻は小笠原長幹の長女である明子です。長男は皓一朗、長女は西脇昌治夫人である美子、三女は武藤正夫人である幸子、そして四女は服部正夫人である玲子と、多くの子女に恵まれました。

参考文献としては、筒井住蓮編の『大日本華族大鑑』や、人事興信所編の『人事興信録』、貴族院事務局の『貴族院要覧』、佐賀新聞社の『佐賀県大百科事典』などがあります。これらの文献は、彼の生涯や業績を理解する上で重要な資料となっています。また、衆議院・参議院編の『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』や、霞会館華族家系大成編輯委員会の『平成新修旧華族家系大成』、杉謙二編の『華族畫報』なども、彼の出自や家系を知る上で貴重な情報源です。

多久龍三郎は、その生涯を通じて、実業、政治、教育といった多方面で活躍し、激動の時代を力強く生き抜いた人物でした。彼の功績は、後世に語り継がれるべきでしょう。

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