多受経

多受経の概要

『多受経』、またの名を『多感受経』は、パーリ仏典の中部経典第59経に位置づけられています。この経典は、釈迦（シッダールタ・ガウタマ）が弟子のアーナンダに対して、さまざまな「受」（vedanā）の数について教えを説いた重要な文献です。

背景

物語は、釈迦がコーサラ国のサーヴァッティー（舎衛城）にあるアナータピンディカ園、すなわち祇園精舎に滞在している際に展開されます。この場所は、釈迦が多くの教えを説いた場所として知られています。アーナンダは、釈迦の最も近い弟子の一人であり、彼の教えを理解しようと常に熱心に学ぶ姿勢を持っています。

受の数

ある日、アーナンダは釈迦に受の数について質問をしました。釈迦はこれに対し、以下のように様々な受の数を説くことになります。

1. 二受：感受は、快（喜びや満足）と不快（苦痛や不快感）に分けられます。これは最も基本的な感覚です。
2. 三受：上記の二つに加え、無感（あるいは中立的な感情）を加えた三つの受が存在します。
3. 五受：これは五つの感覚（視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚）を通じての受を示します。
4. 六受：五感に加え、心の働き（思考や感情）を含めた六つの感受が存在します。
5. 十八受：さらに詳細に分かれた受で、各感覚に基づく多様な感受の状態を示します。

これらの受の教えは、人々がどのように感情や感覚を体験するかを理解する助けとなります。

更なる教え

また、釈迦は、こうした受を超えた存在の段階についても述べました。具体的には、以下のような大いなる境地を提唱します。

• - 四禅：これは、集中した瞑想を通じて達成される深い精神状態で、苦を超越した平安を体験します。
• - 四無色定：物質的な世界を超えた無形の状態への瞑想。
• - 涅槃（ニルヴァーナ）：煩悩を克服し、最終的な解放の状態に至ることを示しています。

このように、釈迦の教えは多層的であり、受についての理解が心の平安と解放へとつながることを教えています。

聴衆の反応

比丘たちは、釈迦の教えを聞き、その深遠さに歓喜しました。彼らは新たな知識を得ることによって、心の成長を実感し、釈迦の教えの本質をより深く理解するきっかけを得たのです。

参考資料

『多受経』の詳細については、いくつかの日本語訳が存在します。例えば、『南伝大蔵経・経蔵・中部経典2』（第10巻）や、『原始仏典 中部経典2』（第5巻）などがあげられます。これらの翻訳を通じて、多受経の教えは現代の私たちにも伝わってきています。

この経典を通じて、感受についての洞察を深め、私たちの日常生活や精神的な探求に生かしていくことが求められています。

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