多摩弁

多摩弁とは

多摩弁は、東京都の多摩地域で話されている日本語の方言で、西関東方言に分類されます。埼玉県の方言と合わせて武州弁とも呼ばれることがあります。この地域は、神奈川県の方言とも共通する特徴が多く、特に多摩南部と神奈川県北部、多摩北部と埼玉県入間地域など、隣接する地域同士で言葉の類似性が顕著です。

しかし、多摩地域内でも方言に差異が見られ、多摩川を挟んで北多摩・西多摩と南多摩では微妙な違いがあります。また、八王子周辺では甲州弁からの影響も受けています。

歴史的背景

かつて多摩郡に属していた中野区、杉並区、世田谷区西部（砧・烏山地域）でも、多摩弁と共通の方言が使われていました。これらの地域は、1879年に東多摩郡または北[[多摩郡]]に属していましたが、その後、東京市に編入されました。

現代の多摩弁

21世紀初頭には、東京都区部との交通網の発達や人口移動により、多摩地域の方言差はほとんどなくなりました。現在では、伝統的な多摩弁の特徴は多摩西部（青梅市、あきる野市、西多摩郡など）の高齢層に限られています。しかし、近年では、多摩弁が地域性を表す資源として注目され、ネーミングやキャッチコピーに活用される事例が増えています。例えば、青梅信用金庫の「地域でいちばんのめっこい信用金庫」や、東大和市の「うまかんべぇ～祭」などが挙げられます。

多摩弁の表現

多摩弁は西関東で広く共通する表現が多いですが、多摩地域特有、あるいは多摩地域が発祥とされる表現も存在します。

あるってく - 歩いて行く。JR東日本のATM「ビューアルッテ」の語源。
あんよ - あるよ。多摩弁では「る」が「ん」に変化しやすい。
あによ、あんだって - 何よ、何だって。「な」が「あ」に変化する現象は多摩・区部全域で見られる。
うざったい、うざい - 元々は多摩南西部周辺で使われていた言葉で、植物が茂っていて邪魔だ、不快だ、気持ち悪いなどの意味。1990年代に全国的に広まった。
えんでる - 茶碗などにヒビが入っている状態を指す。
例:「この茶碗、えんでるから茶が漏るよ」（この茶碗、ヒビが入っているからお茶が漏れるよ）
おかっこま - 正座。特に子供が澄まして座っている様子。
おこじゅー - おやつ。午後３時頃の間食。
落っこちる - 落ちる。
おっぺす - 押す。
かがみっちょ - トカゲ。表皮が鏡のように光っていることに由来。
きない - 来ない。「来る」の未然形に「き」を使う。
こわい - 硬い。
例:「メシがこわいじゃんか」（ごはんが硬いじゃないか）
七面倒くさい - しちめんどくさいと読む。面倒くさいの意味。「しちめんどい」と略すことも。
〜じゃん - 〜ではないか。甲州弁の影響を受けた表現。
だぁよ - である。だよ。
ちっとんべ - 少しだけ。
例:「ちっとんべしか出ねえ」（少しだけしか出ない）
ちゃける - 壊れる。
どどめ - 桑の実。
のめっこい - 手触りや食感が滑らかである。きめが細かい。人間関係の円滑さを表す場合もある。
例:「話は早めにしておかないと、のめっこくいかない」（話は早めにしておかないと、スムーズに進まない）
はけ - 崖。
パチ - 嘘。東京都区部でも使われることがある。
例:「おめぇ、パチこいてんべ？」（お前、嘘ついているだろう）
へつる - 少しだけ減らす、削る。
まっかちん - アメリカザリガニ。南多摩地域で使われる。
まっと - もっと。
例:「まっと、がんばれ」
がめる - 疲れる。
例:「穴掘り仕事は、がめるなあ」

多摩弁を話す著名人

志村けん - 東村山市出身。コントで高齢者を演じる際に多摩弁の特徴が顕著に表れる。

作品

燃えよ剣 - 多摩地域を舞台とした作品。

関連情報

関連項目：神奈川県方言、埼玉弁、群馬弁、甲州弁、郡内弁、東京方言、山の手言葉、江戸言葉。

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