多治見国長

多治見国長（たじみ くになが）

多治見国長は、鎌倉時代末期に活躍した武将です。美濃源氏の流れを汲む土岐氏の一族である饗庭氏に属し、現在の岐阜県多治見市にあたる美濃国土岐郡多治見郷を本拠としていました。

生涯

国長は、後醍醐天皇による鎌倉幕府打倒の計画に深く関与しました。土岐氏の惣領であった土岐頼貞がこの計画を主導し、その命を受けた頼貞の十男、土岐頼兼を大将とする軍勢が京都へ潜入することになります。国長は、この軍勢の副将として、一族の尾里国定、萩原国実、市原国宗、深澤定氏、猿子国行、舟木頼春（土岐頼員）らと共に参加しました。総勢200名ほどの軍勢には、足助氏の当主である足助貞親（加茂重成）も加わっていました。

元亨4年/正中元年（1324年）、彼らは日野資朝の招きに応じて京都に入ります。しかし、計画は思わぬ形で露見します。それは、土岐頼員の妻が、六波羅探題の奉行である斎藤利行の娘であったため、頼員が妻に計画を漏らしてしまったことが原因でした。

計画が露見したことで、六波羅探題の配下である小串範行によって、彼らは夜中に急襲を受けました。『太平記』によると、この時、国長らは無礼講による終夜の酒宴で酔い潰れており、急襲の声に驚き、慌てふためいたとされています。しかし、共に寝ていた遊女の機転により鎧兜を身に着け、寝ている者を起こすことができたため、かろうじて戦う態勢を整えることができました。

国長は、大将の頼兼と共に少数の手勢を率いて奮戦しました。しかし、最終的に敵に館の裏手を突破されたことから、観念し、一族郎党と共に自害して果てました。この事件は「正中の変」として歴史に名を残しています。

死後

国長の死後、その功績が認められ、1905年（明治38年）11月18日には正四位が追贈されました。

地元である多治見市では、現在でも国長は高い人気を誇っています。毎年開催される「多治見まつり」では、武者行列の主役として扱われており、その勇猛な姿が再現されています。また、市内には国長の邸宅跡が残っており、県の史跡として指定されています。

関連事項

饗庭氏

参考文献

『多治見市史 通史編 上』　第二編 中世　第一章 鎌倉時代の郷土　第二節 建武新政　一　多治見国長憤死‐正中の変　p257～p271　多治見市　1980年

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