多賀神社 (多賀城市)

多賀神社：多賀城の歴史を語る神社

多賀神社は、宮城県多賀城市六月坂、高崎に鎮座する延喜式内社です。近江国の多賀大社から勧請されたと伝えられ、古くからこの地に信仰を集めてきました。しかし、多賀城の衰退とともに神社も衰退し、一時、所在が不明となる時期がありました。

歴史資料を紐解くと、その変遷が見えてきます。江戸時代中期に編纂された『鹽竈社記』（延享2年、1745年）では、現在の多賀城廃寺の塔跡付近を往古の多賀神社跡地とする推測が記されています。さらに、『風土記御用書出』（安永3年、1774年）では、浮島神社が多賀神社と記され、江州多賀神社からの勧請であることが明記されています。一方、高崎村の「神明社」は『風土記御用書出』では多賀神社との関連は触れられていませんでした。しかし、明治20年代以降、この神明社が多賀神社を名乗るようになったのです。

大正11年（1921年）、多賀城廃寺跡は多賀城跡とともに史跡指定を受け、「高崎廃寺」と呼ばれるようになりました。多賀神社は、この廃寺跡の塔基壇上に鎮座していましたが、昭和40年（1965年）、多賀城廃寺が国の特別史跡に指定されたことを受け、現在地へ遷宮されました。そして、平成13年（2001年）には社殿の改築も行われています。

多賀神社の主祭神は武甕槌命と経津主命です。天照皇大神、久那斗神、菅原道真も配祀されています。現在地は、かつての多賀城政庁正殿のほぼ真北に位置し、多賀城廃寺の隣に鎮座しています。旧社地は現在地から北東約50mの地点にありました。六月坂地区の発掘調査や環境整備事業に伴い、現在地への遷宮が行われたのです。遷宮前は鳥居も存在していましたが、現在は撤去されています。

多賀神社は、旧社格は村社で、明治5年（1872年）9月に村社に加列されました。その後、留ヶ谷の神明社と天神社、東田中の志引神社を合祀しています。興味深いことに、伊弉諾・伊弉冉を祀る多賀大社と同じく、竹で編んだ箍（タガ）が多数奉納されていることが知られています。現在、多賀城市教育委員会は、この多賀神社を公式に延喜式内社として認めており、標柱や案内板も整備されています。

一方で、市川村の『安永風土記書出』（安永3年、1774年）には、多賀神社に関する記述は見当たりません。多賀神社の創建や詳細な歴史については、依然として不明な点が多く残されています。

アクセスは、JR東日本東北本線国府多賀城駅から徒歩5分と便利です。多賀城の歴史を深く理解するためにも、訪れてみる価値のある神社と言えるでしょう。

もう一度検索