多賀郡 (陸奥国)

多賀郡（たがぐん）

多賀郡は、8世紀に日本の陸奥国中部に存在した郡です。現在の宮城県多賀城市周辺に位置していたと考えられています。この地域は、古代において重要な拠点であり、多賀城が置かれていました。

歴史

郡の成立

多賀郡に関する最初の記録は、多賀城の存在を示すものです。724年に多賀城が創建されたことが多賀城碑に記されています。また、『続日本紀』には、737年に藤原麻呂と大野東人が出羽国への道路開通作戦の拠点として多賀柵を利用したという記述があります。しかし、これらの記録は多賀郡の存在を直接示すものではありません。

多賀郡の存在が示唆されるのは、『続日本紀』の752年の記述です。そこには、「陸奥国の調庸は、多賀以北諸郡に黄金を輸さしむ」とあり、この「多賀以北」を多賀郡以北と解釈する説があります。この解釈が正しければ、この時点で多賀郡が存在していたことになります。

正式な郡へ

785年、陸奥按察使大伴家持は、多賀・階上の二つの権郡を正式な郡にすることを提言しました。当時、陸奥国は広大であり、多賀と階上の二つの権郡に百姓を集めて国府の兵力を増強していました。しかし、これらの権郡には郡司が任命されておらず、正式な郡として官員を配置し、民を統率する必要があったのです。この提言が認められ、多賀郡は正式な郡として設置されました。権郡と真の郡の違いは、郡司の有無にありました。

その後

多賀郡に関する史料は、785年以降ほとんど残っていません。『和名類聚抄』では、国府所在地として宮城郡が記録されています。多賀郡は、後の宮城郡の一部となり、多賀城を含む地域であったと考えられています。しかし、多賀郡がいつ廃止されたのか、その範囲はどこまでだったのかは不明です。同じく権郡であった階上郡とともに、その歴史は多くの謎に包まれています。

まとめ

多賀郡は、古代陸奥国において重要な役割を果たした郡の一つです。多賀城を中心とした地域であり、軍事的にも重要な拠点でした。しかし、記録が少ないため、その詳しい歴史は解明されていません。今後の研究によって、多賀郡の全貌が明らかになることが期待されます。

参考文献

青木和夫・稲岡耕二・笹山晴生・白藤禮幸・校注『続日本紀』2（新日本古典文学大系13）、岩波書店、1990年。
青木和夫・稲岡耕二・笹山晴生・白藤禮幸・校注『続日本紀』5（新日本古典文学大系16）、岩波書店、1998年。
多賀城市史編纂委員会『多賀城市史』1（原始・古代・中世）、多賀城市、1997年。

関連項目

多賀郡 - 常陸国にあった同名の郡。

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