大ソマリア主義

大ソマリア主義とは

大ソマリア主義（Pan-Somalism）とは、アフリカ北東部に居住するソマリ民族の居住地域を統合し、「大ソマリア」を建設しようとする思想です。19世紀後半のアフリカ分割により、ソマリ人の居住地域は複数の国に分断されました。この分断された地域を再び統合しようとする動きが、大ソマリア主義として現れました。

ソマリア分割の歴史的背景

19世紀後半、ヨーロッパ列強によるアフリカ分割が進む中、ソマリ人の居住地域は以下の5つに分割されました。

イタリア領ソマリランド（現在のソマリアの大半）
イギリス領ソマリランド（現在のソマリランド）
フランス領アファル・イッサ（現在のジブチ）
エチオピア領オガデン（現在のソマリ州）
* イギリス領ケニア植民地（北東部）

ソマリア独立と大ソマリア主義の誕生

第二次世界大戦後、旧イタリア領ソマリランドは国際連合の信託統治領となり、1960年に独立することが決定しました。この独立を機に、ソマリ民族の統一を求める運動が高まり、英領ソマリランドとの合併を経てソマリア共和国が成立しました。この過程で、すべてソマリ人が一つの国家に集結するという構想が生まれ、大ソマリア主義が提唱されるようになりました。

大ソマリア主義の展開とオガデン戦争

ソマリア独立後、初代大統領アデン・アブドラ・ウスマンは大ソマリア主義を掲げ、周辺地域への領土拡大を目指しました。しかし、1969年にシアド・バーレが大統領に就任すると、その傾向はさらに強まりました。バーレは国内の求心力を高めるため、より一層大ソマリア主義を唱えるようになります。

1977年、エチオピア領オガデンに住むソマリ人が分離運動を激化させ、ソマリア軍がオガデン地方へ侵攻しました。これがオガデン戦争です。この戦争はソマリア経済を疲弊させ、国内の政治的混乱を招き、内戦へと発展しました。その結果、バーレ政権は弱体化し、大ソマリア主義も衰退しました。

現在の状況

2009年現在、ソマリアは20年近くに及ぶ無政府状態にあり、大ソマリア主義を唱える勢力は存在しません。2012年にソマリア連邦共和国が設立されましたが、依然として国内の統一は達成されておらず、大ソマリア主義が復活する可能性は低いと考えられています。

大ソマリア主義の歴史的意義

大ソマリア主義は、ソマリ民族の統一を求める運動として、ソマリア独立の原動力となりました。しかし、その後の領土紛争や内戦を引き起こし、ソマリア及び周辺地域に大きな混乱をもたらしたことも否定できません。大ソマリア主義の歴史は、民族主義の光と影を示すものとして、重要な教訓を含んでいます。

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