大久保房男

大久保房男

大久保房男（おおくぼ ふさお、1921年9月1日 - 2014年7月25日）は、昭和から平成にかけて日本の文壇を支えた編集者、そして作家としても知られる人物です。

生涯

1921年、三重県北牟婁郡紀伊長島町（現在の紀北町）に生まれた大久保は、旧制津中学校を経て慶應義塾大学国文科に進学し、折口信夫に師事しました。学徒出陣により1943年に出征、海軍予備学生（第4期）を経て1944年暮に海軍少尉に任官。しかし、終戦により復員し、1945年10月に復学。翌年9月に大学を卒業しました。

民俗学研究者を志していた大久保でしたが、偶然に講談社の入社試験に合格。1946年11月、同社に入社し、編集者としてのキャリアをスタートさせました。

1955年から1966年まで、彼は『群像』の編集長を務めました。その編集手腕は「文学の鬼」と評されるほどで、石原慎太郎や有吉佐和子といった人気作家の作品を掲載しないという独自の編集方針を貫きながらも、雑誌に活気をもたらしました。また、吉行淳之介や安岡章太郎など、後の文壇を担う「第三の新人」と呼ばれる作家たちを陰で支えたことでも知られています。

編集者として第一線を退いた後、大久保は作家としての才能を開花させました。1992年には、小説『海のまつりごと』で芸術選奨新人賞を受賞。70歳での新人賞受賞は、多くの人々を驚かせました。

2014年7月25日午前11時10分、十二指腸乳頭部癌のため東京都練馬区の自宅で逝去。92歳でした。

大阪大学名誉教授の大久保昌一は弟、国立遺伝学研究所教授の大久保公策は甥にあたります。霊術家の浜口熊嶽は父の従兄にあたります。自らと同じく国文学学生から海軍に入った阿川弘之とは編集者時代から長年にわたって親交があり、たびたび随筆などでその言動が「鬼のおくび」というニックネームのもとで記されています。

著書

『文士と文壇』（講談社 1970年）
『文芸編集者はかく考える』（紅書房 1988年）
『海のまつりごと』（紅書房 1991年）
『理想の文壇を』（紅書房 1993年）
『文士とは』（紅書房 1999年）
『人間魚雷搭乗員募集 一学徒兵の特攻』（光人社 1999年、光人社NF文庫 2005年）
『文士のゴルフ 丹羽学校三十三年の歴史に沿って』（展望社 2000年）
『終戦後文壇見聞記』（紅書房 2006年）
『日本語への文士の心構え すぐれた文章を書くために』（アートデイズ 2006年）
『文士と編集者』（紅書房 2008年）
『戦前の文士と戦後の文士』（紅書房 2012年）

関連項目

原民喜

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