大井海軍航空隊

大井海軍航空隊：太平洋戦争下の偵察航空の要

大井海軍航空隊は、第二次世界大戦中の日本海軍において、偵察機乗員の養成を担った重要な航空隊でした。対米英戦備増強計画の一環として、静岡県榛原郡川崎町（現・牧之原市）に1942年4月1日に創設されました。茶畑だった牧之原台地を飛行場に整備し、第一三連合航空隊を編入して本格的な活動を展開しました。

訓練と発展

大井海軍航空隊は、主に土浦海軍航空隊から卒業した学生や練習生を受け入れ、実機を用いた実践的な訓練を行いました。九〇式機上作業練習機や白菊などの練習機に加え、九七式艦上攻撃機など第一線を退いた機体も訓練に使用されました。

隊の規模は徐々に拡大し、1943年には整備学生への航空機実習が開始され、上海への分遣隊も設置されました。1944年には、上海分遣隊は独立し、上海海軍航空隊として発足しました。また、館山海軍航空隊からの派遣隊も合流し、遠州灘における哨戒や掃討任務にも従事するようになりました。

特攻隊「八洲隊」の編制

1945年3月、「天一号作戦」の発動に伴い、大井海軍航空隊は特攻隊の編制を命じられます。白菊を主力機とする3個中隊からなる「八洲隊」が編成され、同年4月には「菊水一号作戦」に備えて特攻待機命令が出されました。しかし、「菊水作戦」終了後の6月25日、八洲隊の特攻待機は解除され、航法訓練へと移行しました。終戦間近には、八洲隊の一部が愛媛県に移動し、第五航空艦隊の指揮下に入りました。

終戦とその後

終戦時、大井海軍航空隊は連日の空襲で壊滅的な被害を受けながらも、細々と訓練を続けていました。八洲隊は出撃することなく終戦を迎えました。跡地は元の農地に戻り、茶畑として復旧されました。現在では、当時のエンジンや車輪などの部品が牧之原コミュニティセンターに展示されており、歴史を偲ぶことができます。

主力機種

九〇式機上作業練習機
白菊
九七式艦上攻撃機（他、第一線を退いた攻撃機・陸上偵察機）

歴代司令

松岡知行 大佐：1942年（昭和17年）4月1日 - 1942年（昭和17年）11月1日
三好恒 大佐：1942年（昭和17年）11月1日 - 1944年（昭和19年）5月1日
（兼）市丸利之助 少将：1944年（昭和19年）5月1日 - 1944年（昭和19年）7月1日
神岡重雄：1944年（昭和19年）7月1日 - 1944年（昭和19年）8月7日
奈良孝雄：1944年（昭和19年）8月7日 - 終戦

まとめ

大井海軍航空隊は、太平洋戦争において偵察航空の重要な役割を担った部隊でした。その歴史は、パイロット養成から特攻隊の編制、そして終戦まで、激動の時代を反映しています。現在に残る遺構は、その歴史を後世へと伝える貴重な証となっています。

参考文献

『日本海軍編制事典』（芙蓉書房出版　2003年）
『航空隊戦史』（新人物往来社　2001年）
『日本海軍航空史2』（時事通信社　1969年）
『戦史叢書　海軍航空概史』（朝雲新聞社　1976年）
* 『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』（アテネ書房　1996年）

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