牧之原台地

牧之原台地：静岡を代表する茶産地の素顔

牧之原台地は、静岡県中西部の遠州地方南東部に位置する台地です。島田市、牧之原市、菊川市にまたがり、かつては布引原とも呼ばれていました。大井川と菊川に挟まれたこの台地は、その豊かな自然と歴史を背景に、日本有数の茶産地として発展を遂げてきました。

歴史：未開の原野から茶畑へ

江戸時代まで、牧之原台地は麓の村々の入会地であり、草刈り場として利用される未開拓の原野でした。「牧場」があったことが地名の由来とも言われていますが、定かではありません。明治時代に入り、徳川家達に従って静岡に移住した幕臣や、大井川の渡船廃止によって失業した人足に払い下げられましたが、元の入会地を利用していた住民との紛争が頻発しました。

台地であるため、農業用水や生活用水の確保が困難で、多くの脱落者が出ましたが、農民らによる茶園開墾が進み、現在のような広大な茶園が形成されました。しかし、農家一戸あたりの耕作面積は広いものの、人口密度は低く、交通の便も悪いため、不便な地域でした。

第二次世界大戦中には、海軍の大井海軍航空隊基地が建設され、その跡地は現在、矢崎グループの工場などになっています。

戦後も慢性的な水不足は続き、農薬散布に必要な水の確保に苦労しました。1978年からは国営牧之原農業水利事業が始まり、大井川の長島ダムを水源とする導水路を経て、牧之原揚水場から台地へ水を引く工事が進められました。1996年には、台地上に樹枝状に広がる80km以上の水路が完成し、安定した水の供給が実現しました。

地理：大井川が育んだ扇状地

牧之原台地は、北端部の標高が270m、南端部の標高が40-50mで、全長は約25kmです。北から南へ緩やかに傾斜しており、樹枝状の地形をしています。これは、古代に大井川の扇状地であったことに由来すると考えられています。台地の東方と南東方には、支脈となる台地が延びています。

農業：日本有数の茶産地

牧之原台地は、静岡県有数の茶産地として知られています。石が多く、水はけの良い赤土で弱酸性の土壌と温暖な気候が、茶の栽培に適しています。静岡県内でも早場所の茶園であり、4月中旬には新茶が収穫されます。

かつては米作には向かない不毛の土地でしたが、明治維新後、無禄士族対策として多くの士族が入植し、開墾作業が始まりました。茶樹の栽培が奨励された結果、現在のような広大な茶畑が広がる日本一の製茶地帯へと発展しました。

牧之原台地は、その歴史と自然の中で育まれたお茶とともに、これからも発展を続けていくことでしょう。

参考文献

『角川日本地名大辞典』第22巻「静岡県」、角川書店、1982年、ISBN 4040012208
大石貞男『静岡県茶産地史』農山漁村文化協会〈大石貞男著作集 2〉、2004年。ISBN 4-540-03163-5

関連項目

牧之原気象レーダー観測所
島田中継局（牧之原中継局）

外部リンク

* [外部リンク]

もう一度検索