大内重弘

大内重弘

大内重弘（おおうち しげひろ）は、鎌倉時代末期の周防国（現在の山口県）を拠点とした武士であり、有力豪族である大内氏の第22代当主です。

生涯

先代当主である大内弘家の子として生まれ、正安2年（1300年）に父の死を受けて家督を相続しました。『大内氏系図』によれば、重弘は鎌倉幕府の出先機関である六波羅探題の評定衆を務めていたとされています。

大内氏は、代々周防国の在庁官人として勢力を拡大し、鎌倉幕府の御家人となっていました。正元年間には、六波羅探題の傘下で京都の治安維持にあたる「在京人」となり、中央政界にも影響力を持つようになります。また、在庁の軍事・警察権を独占的に支配していた多々良氏一門の族長的な存在として、在庁官人の盟主的立場を確立していました。

重弘が家督を継いだ13世紀末頃から、東大寺大勧進職の利権化に伴い、東大寺の僧侶たちが周防国衙領の支配に介入し、暴力的な行為も発生するようになります。これに対し、地元の在庁官人たちが反発するという構図が生まれ、重弘もこの問題に深く関わっていきます。

正和元年（1312年）以降、大勧進職・国司上人であった心源、および目代として派遣された承元が、在庁官人たちと激しく対立します。心源・承元は、国衙領内の在庁官人や他の寺社領を全て収公し、国衙領に加えようとしましたが、在庁官人側はこれに強く反発。東大寺の末寺である阿弥陀寺の所領も収公対象になっていることに着目し、大勧進職が阿弥陀寺の廃絶を企てていると訴えました。重弘は、六波羅探題での地位を利用して幕府や朝廷に働きかけただけでなく、実玄を中心とする僧侶たちに賄賂を贈り、味方につけて心源排除の強訴を行わせました。心源側の僧侶も実玄の配流を求める強訴を起こしましたが、在京していた重弘の工作により失敗に終わり、代わりに一旦収公した阿弥陀寺の寺領を再寄進して事態の収拾を図りました。しかし、重弘ら在庁官人の抵抗は続き、文保2年（1318年）末までに心源を罷免に追い込みました。

元応2年（1320年）3月6日、重弘は死去し、跡を嫡男の弘幸が継ぎました。

人物

大内重弘は、鎌倉幕府の中枢で活動する一方で、周防国の権益を守るために奔走しました。東大寺との対立では、幕府や朝廷への工作、僧侶への懐柔など、様々な手段を駆使して在庁官人側の主張を通しました。このことからも、重弘が政治手腕に長けた人物であったことがうかがえます。

参考文献

松岡久人 著、岸田裕之編 編『大内氏の研究』清文堂出版、2011年11月。ISBN 9784792409524。
オメガ社編 編「大内氏」『地方別日本の名族』 9 中国編、新人物往来社、1989年。ISBN 9784404015440。
竹内理三博士還暦記念会編 編『荘園制と武家社会』吉川弘文館、1969年。
防長新聞社山口支社編 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年3月。
* 御薗生翁甫 著「付録 新撰大内氏系図」、田村哲夫編修 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修（復刻版）、マツノ書店、1980年11月。

もう一度検索